※ChatGPT画伯作、”A dramatic poker game scene in a dimly lit casino where a player has just lost everything after going all-in in Texas Hold’em.”
ペアが揃っている(揃っていない)場合
前回プリフロップにおける戦略について書いたので、引き続いてフロップにおける戦略を考える。フロップでは3枚の共通カードが追加されるため、プリフロップと比較して考えられる組み合わせが急増する。そのため、フロップからは定石と言えるほど定まった戦略は存在しなくなる。とはいえ、この時点で手札2枚と共通3枚の5枚が存在するため、これらの組み合わせでできている役からどのように判断すべきかについて一定の指針を与えることができるだろう。これを簡単にまとめていく。単純化のため、この節ではストレートとフラッシュの可能性は考えないものとする。
1. ツーペア以上の役
対戦相手の手札次第であるが、この場合勝者があなたである確率が高いため、勝つことを前提にベット戦略を考えれば良いだろう。反対を言えば、フロップ時点でツーペア以上の役が揃っていることは稀であるとも言える。もちろん、ナッツといわれる絶対に負けない手札でない限り、負ける可能性もあるが、勝率が高い手札でベットを上げないと期待値が上がらないので、負けた場合は事故だと思って攻めるべきだろう。
2. ワンペア(トップ)
例えば、あなたの手札がA8oであるときに、共通カードがA,9,5となった場合、Aのワンペアが確定する。この場合も基本的には強気に攻めてよいケースだろう。ただし、共通カードが8,5,2である場合のようにトップヒットのワンペアでランクが低い場合は、トップのワンペアであっても逆転される可能性は相応にあるということに注意が必要である。
3. ワンペア(ミドル)
例えば、あなたの手札がA8oであるときに、共通カードがQ,8,5となった場合、8のワンペアが確定する。この場合は弱気になる必要はないが、Qを持っているプレイヤーがいる場合は負けているので、他のプレイヤーの行動を観察しながら戦略を考えるということになる。勝率自体はこの場合でも平均より高いので簡単にFoldしない方が良いかもしれない。
4. ワンペア(ボトム)
例えば、あなたの手札がA5oであるときに、共通カードがQ,8,5となった場合、5のワンペアが確定する。この場合、5のワンペアだけでは勝率は高くないことに注意する。勝率自体は例えば4人残っていれば25%程度になるが、フロップに残っているプレイヤーはランダムな手札より強めの手札を持っている可能性が高いため、平均的な勝率より低めに見積もるべきかもしれない。ツーペア以上の手札が揃うことを期待して耐えるか、逆転のシナリオが描けないのであればFoldすべきとなるだろう。
5. ワンペア(ポケットペア)
あなたの手札がAAであるときに、共通カードがQ,8,5となった場合においてもワンペアが成立する。もし、ポケットペアのランクが共通カードのランクより高い場合は勝利確率は高いので強気に攻めてよいだろう。勝利確率としては、ポケットペア(1st)>ワンペア(トップ)>ポケットペア(2nd)>ワンペア(ミドル)>ポケットペア(3rd)>ワンペア(ボトム)>ポケットペア(4th)と考えてよい。
6. ハイカード
フロップ時点で役がない(ハイカード)場合、たとえカードのランクが高くても負けている確率が平均より高いので基本的には撤退を考えてよいと思う。例えば、手札がAQoであったが、公開カードがK,8,3みたいな場合は、手札が強く見えても勝利確率は平均より低いので注意が必要である。ただし、フラッシュやストレートが狙える場合は耐えてよいし、3-betで残ったプレイヤーが2,3人という形式でフロップに入った場合、対戦相手もハイカードということも少なくないので、この場合は強気に攻めても良いということになるかもしれない。
ストレートドローとフラッシュドロー
ポーカーの役には同じランクのカードを揃えるワンペアなどの役の他に、ストレートとフラッシュが存在する。成立する確率は高くないが、成立すれば高い確率で勝利することができるため、これらが揃う可能性がある状況では強気に出てもよいということになるだろう。最初にフロップの段階でストレートを狙える状況について分類する。
1. ストレートが成立している
手札と共通カードでストレートが成立している場合は勝利確率が高いので、積極的に攻めるべきである。注意点として、手札が89oで共通カードがQ,J,Tのような場合、AKoのプレイヤーもストレートであり、かつ、この場合は負けになってしまうので、ストレートのランクも意識して意思決定するようにすべきだろう。
2. オープンエンド(Open End)
手札と共通カードで4枚の連続したランクが並んでいる状態をオープンエンドという。2/13の確率でストレートが成立することになる。フロップの段階でオープンエンドであれば、大体30%(≒2/13+2/13)ぐらいの確率でストレートが成立する。ストレート一択狙いでは確率が低いように見えるが、高いランクのペアが成立する確率と合わせて手札の評価を行えばよいだろう。
3. ガットショット(Gutshot)
手札と共通カードで4枚の連続していないが、あと1枚でストレートが成立する状態をガットショットという。フロップの段階でガットショットであれば、大体15%(≒1/13+1/13)ぐらいの確率でストレートが成立する。オープンエンド同様にストレート一択狙いでは確率が低いように見えるが、高いランクのペアが成立する確率と合わせて手札の評価を行えばよい。
4. バックドアストレートドロー
手札と共通カードであと2枚特定のランクのカードがターン、リバーで出てくるとストレートになる状態をバックドアストレートドローという。ストレートになる可能性がある状態であるが、現実的にはこの状態からストレートになる確率はあまりない(1%程度)ため、これを理由に積極的にベットするということはないだろう。ただし、この組み合わせの数が5~10個以上になる場合もあるため、ターンでオープンエンドやガットショットになった場合に改めてストレートが狙えるかを考えればよい。
同様にして、フロップの段階でフラッシュを狙える状況について分類する。
1. フラッシュが成立している
手札と共通カードでフラッシュが成立している場合は勝利確率が高いので、積極的に攻めるべきであるが、共通カードのSuitが3枚揃っていると他のプレイヤーは相当に警戒するので、あえてチェックで回して様子を見るという戦略を選ぶこともできる。また、ランクが低いとリバーやターンで同じSuitのカードが出た結果、他のプレイヤーもフラッシュになって負けてしまうこともあるので、ベットを吊り上げてディフェンスした方が良い場合もあることに注意した方が良いだろう。
2. フラッシュドロー
手札と共通カードでSuitが揃っているカードが4枚ある状態をフラッシュドローという。ターン、リバーでフラッシュが揃う確率は大体35%(≈ 9/47+38/47×9/46)ぐらいあるため、積極的にベットを打ってもよい状態であると考えられる。手札1枚+共通カード3枚である場合でも、手札のランクが高い場合は積極的に仕掛けても問題ないだろう。当然のことながら、自分の手札から2枚出ている場合の方が勝率は高い。
3. バックドアフラッシュドロー
手札と共通カードでSuitが揃っているカードが3枚ある状態をバックドアフラッシュドローという。ターン、リバーでフラッシュが揃う確率は大体4%(≈ 10/47×9/46)ぐらいであり、これを理由に積極的にベットするということはないだろう。ターンで同じSuitのカードが出た場合に改めてフラッシュが狙えるかを考えればよい。当然のことながら、自分の手札から2枚出ている場合の方が勝率は高い。
ストレート、フラッシュに共通して言えることであるが、自分がストレート、フラッシュが成立する可能性がある状況であるということは、他のプレイヤーについてもストレート、フラッシュが成立する可能性がある状況であるということであり、手札のランクなどに気を配りながらプレイした方が良いだろう。
継続ベット(CB: Continuation Bet)とブラフ
フロップにおけるベッティングアクションはSBから始まるが、一般的にはプリフロップで最後にレイズしたプレイヤー(アグレッサーという)まではチェックで回るようである。このアグレッサーの行動の前にベットする行為はドンクベットと言われており、手札の強さを公開してしまう行為ということで初心者はやらないようにしましょうと言われる行動である。慣れたプレイヤーであれば、(ドンクベットに対してフォールドしやすいなどの傾向がある場合における)ブラフの一形態と見ることもできるし、パッシブなプレイヤーがアグレッサーの場合にベットしないこともあるため、強い手札のディフェンスのためにドンクベットすることもあるようなので一概には言えないが、ここではドンクベットはしないものと仮定しよう。
この仮定から、フロップにおける最初の意思決定者はアグレッサーであるとみなすことができる。第1節で示したように、手札と公開カード3枚で役がてきている場合と役ができていない場合の2つに分けることができるだろう。アグレッサーが選択できる行動としては、ベットとチェックがあるが、ベットについても強めにベットする場合と中程度にベットする場合に分けることができるだろう。これらをケース分けすると以下の通りである。
手札がヒットした | 手札が外れた | |
---|---|---|
ベット(高め) | ディフェンス | ブラフ |
ベット(中立) | バリュー | ブラフ |
チェック | フェイク | 逆転狙い、撤退 |
アグレッサーはプリフロップで最も強い手札を持っていると主張していたプレイヤーと見ることができるため、チェックを選択するとほかのプレイヤーから”あ、あいつ外したな”と思われることになる。アグレッサーがチェックする場合は、撤退か強い役ができたことを隠そうとしている(フェイク)かのいずれかだろう。そのため、アグレッサーはベットを選択することが多いし、ターン・リバーでも継続してベットすることが少なくない。アグレッサーが行う連続的なベットのことを継続ベット(CB: Continuation Bet)という。
CBの都合のいい点は、バリューベットとブラフベットの区別がしづらい点だろう。手札の強さに応じて賭け金を積み上げるベットがバリューベットであるが、手札が外れた場合でも”当たったぞ”と示すことで、他のプレイヤーを降ろすことができることも少なくない。初心者、上級者を問わずCBに対してフォールドしすぎる傾向があるということは統計的に確認されているらしい。そのため、アグレッサーになった場合はCBを打つ確率を意識して高めにするとよいだろう。ただし、CBも打ちすぎると次のような問題がある。
フロップの段階でペアがヒットする確率は大体40%ぐらい(ハイカードの確率が50%ぐらいで、10%ぐらいは共通カードでワンペアができるだけなので除外する)なので、ベット:チェックとバリュー+フェイク:ブラフ+撤退の比率は4:6ぐらいになるイメージだろう。フラッシュドローやストレートドローでもヒットしたとみなしてベットする場合もあるので、この比率は5:5ぐらいにすることもできる。しかし、明らかにブラフを多用しているというのがばれてしまうケースは、この比率が不自然な場合である。強気すぎてフェイクを全く利用せず、ブラフの利用比率が高い場合、フロップで不自然にベットする頻度が高くなってしまい、勘のいいプレイヤーにブラフを狙いに来られる(ブラフキャッチされる)ことがあるため注意が必要だろう。
手札はヒットしているが、できている役の割に強めのベットを出す場合であるが、これはフラッシュやストレートが完成される可能性が高い場合に、それを狙うプレイヤーが残ることをブロックする目的で実行する場合が多いようである。逆転を賭けたガチャを引くことを躊躇わせる目的でベットを上げるということで、フラッシュガチャ、ストレートガチャは安くないぞと示す目的で実行される。フラッシュドローだと成立確率が35%ぐらいあるので、割が合わないベットにするためには現在のポットの合計以上のベット(現在のポットの合計以上のベットをすることをオーバーベットという)をしてブロックする必要があるだろう。
アグレッサー以外のプレイヤーは、アグレッサーが提示するベットにコールするかフォールドするかが基本であろうが、もちろんレイズで返すこともできる。プレイヤーが採用する行動とベットが低い、中立、高いで以下のような組み合わせになるだろう。
ベットが低い | ベットが中立 | ベットが高い | |
---|---|---|---|
レイズ | バリュー | ディフェンス | ブラフ |
コール | フェイク | バリュー | 逆転狙い |
フォールド | --- | --- | 撤退 |
基本的にはアグレッサーと考え方は同じであるが、ベットが小さすぎると思う場合はレイズしてもよいし、アグレッサー自身がフラッシュやストレートを狙いにベット額を抑えている場合もあるので、ディフェンスのためにレイズするという行動とった方が良い場合もあるだろう。もちろん、アグレッサー以外からもブラフを仕掛けることもできる。タイトアグレッシブのプレイヤーの中には、ベットに対してレイズを返されたらフォールドするという戦略を採用しているプレイヤーもいるらしいので、そういう雰囲気があるプレイヤーがいればブラフでレイズを返してみるという戦略を考える価値もありそうである。
ルースパッシブなプレイヤーとの戦い方
前節までで今回の内容は終わりであるが、プレイしていて悩ましく感じるのは初心者っぽいプレイスタイル(ルースパッシブ)のプレイヤーがなかなか手強く感じるということである。こういうプレイスタイルは初心者だからカモだみたいなことを書く本もあるが、意外に攻略が難しいと感じるのである。具体的な特徴を書くと以下のようなプレイスタイルである。
- プリフロップではある程度手札のレンジを絞るものの広い手札で参戦してくる。特に(フラッシュ狙いの)Suited、(ストレート狙いの)Connectedの参加率が低ランクであっても高い。プリフロップでレイズすることをほとんどせず、3-betではフォールドするなどプリフロップでベットが吊り上がることを嫌がる傾向がある。リンプインすることも少なくない。3-betするプレイヤーだと認識されるとそのプレイヤーがFoldするまで警戒してリンプインで回してくる。
- ストレートやフラッシュなど強い役を作ることに執着する傾向がある。
- フロップで目標としている役が作れそうにないとみるとほぼ確実にフォールドする。CBが1bbなど非常に小さいベットでも何の躊躇もなくフォールドする。
- 反対に強い役ができそう、あるいは、すでにできた場合でも基本的にチェックとコールしかせず、リバーになって突然ベットを吊り上げようとする(場合によってはそれもせずにリバーでもチェックする)。
- ポケットペアやランクが高いOff Suited(2枚ともJ以上)を引くとプリフロップからオールインしてくる(これらの手札はストレートやフラッシュ狙いと異なり、ブラフの運用が必要になるからだろうと推測される。)
これに対する教科書的な対抗策は次のようなものであるかもしれない。
- プリフロップで参入する手札を強いものに絞るようにする。プリフロップではベット額を吊り上げるように仕掛ける。降りるか悩むようにコールレンジと3-betレンジの中間ぐらい(4~6bbぐらい)を狙ってみるのもよいかもしれない。
- フロップでは基本的にCBを打つ。ただし、ブラフベットをしないようにする。手札が外れた場合も小さいサイズのベットを打てばよいだろう。このプレイスタイルのプレイヤーが下りるのはベット額の大きさより、目標としている役が作れない場合であるため、ブラフを打っても負けた時の損失が大きくなってしまうだけかもしれない。バリューベットでベットを吊り上げて、対戦相手に役が出来なかった場合はそこそこチップを奪うことができる。
- 共通カードからストレートやフラッシュが作れそうか確認して、どの役を狙っているかを予想する。
- 対戦相手が強いベットを出してきたら基本的にフォールドする。高いランクのワンペアやツーペアで勝てると思い込まないようにする。反対に、相手がストレート狙いで自分がフラッシュを持っている、相手がフラッシュ狙いでフルハウスを持っているなど、勝てる目算がある場合はオールインまで持っていくようにする。これが大きくチップを奪い取れる唯一の機会かもしれない。
- プリフロップからオールインは基本的に無視だが、強い手札があるときに参戦したい場合は参戦してもよい。弱い手札なのに頭にきて参戦するのは絶対ダメ。
このプレイスタイルにはブラフという行動がほとんど通用しないし、反対に対戦相手もブラフということをほとんどしてこないという意味で、ブラフを無効化するように最適化されたプレイスタイルなのかもしれない。対抗策を見る限りにおいては、まあその通りなんだろうと思うのであるが、これがひどく忍耐を要求される気がするのである。大きくチップを奪い取れる唯一の機会といえる状況が来ることは滅多にないし、プリフロップやフロップのCBで奪い取れるチップの量は微々たるもの、プリフロップからのオールインは運ゲー以外の何かではないということで、ブルドーザーの前でどれだけ小銭を拾えるかというゲームをやることになる。実際に、数十ゲームやって全員の保有チップがほとんど変わっていないということもよくあることのように思う。
筆者はどうもこの忍耐を要求される作業を繰り返すことに耐えられず、高いランクのワンペアができた場合とかにアグレッシブにベットを吊り上げた結果、フラッシュに刺されて爆死するということを繰り返してしまっているような気がするのである。このように考えると、ルースパッシブのプレイヤーは初心者でカモな人たちであるよりも、忍耐や時間の無駄遣い(レーキを取られる場合はチップの無駄遣いでもある)だから相手したくないプレイヤーという意味合いの方が強いのかもしれない。このプレイスタイルは対抗策も含めてプレイヤーのスキルより運の要素が強くなってしまう傾向があるのだろう。本当に弱いだけだったら、わざわざ本でこういうプレイスタイルは止めましょうなどとは指摘してこないだろう。上級者にはこのスタイルのプレイヤーはいないと言われるのは、このスタイルだと負けてしまうというよりも相手にされないということに原因があるのかもしれない。