概要
開発しているゲームの修正が一段落して、Edge Pokerはなぜあのようなゲームのルールを採用したのかということをボーっと考えてみたのであるが、根本的な原因はやはり開発会社の収入の構造がソーシャルゲームのそれであるためだろうと思われる。最近の投稿とは、色合いが異なる内容であるがこういう理由なんじゃないかという推測を述べてみようと思う。
ソーシャルゲームの収入構造
ソーシャルゲームをやるとき、一つのゲーム当たりどの程度課金しているだろうか?一般的には、年間の課金額で大体以下のように分類されるらしい。
- 廃課金・・・年間300~1000万円(0.5~1%)
- 重課金・・・年間50~100万円(4~5%)
- 微課金・・・年間10~20万円(20~30%)
- 無課金・・・年間0~5万円程度(60~70%)
月額パス(月額2000~3000円)とガチャがあるソーシャルゲームのプレイ感で考えると以下のようなイメージだろうか。
- 廃課金・・・ほぼすべてのイベントで完凸、フルコンプする。
- 重課金・・・ほぼすべてのイベントでガチャを回す。強キャラは完凸する。
- 微課金・・・月額パス+(年に1,2回)お気に入りのキャラは入手のためガチャを回す。
- 無課金・・・1円も払わないか、月額パスのみ課金
ちなみに筆者は微課金かなと思うゲームが1つ2つある程度で、ほとんどが無課金層に当たる。議論の簡略化のため、以下では金額と構成比率を以下のように単純化する。
- 廃課金・・・500万円(1%)
- 重課金・・・50万円(5%)
- 微課金・・・10万円(25%)
- 無課金・・・0(69%)
これを元にソーシャルゲームの売上比率を分析すると、上位1%が売上の50%、上位6%で75%を占めることになる。無課金・微課金でプレイしていると、1万人ぐらいしかプレイヤーがいないゲームの売上が年間10億円とかになっていると、一体どうやって売り上げを出してるんだという気分になるが、そのほとんどはごく少数の廃課金者・重課金者が支えているという構造になっている。
もちろん、ソーシャルゲームの開発会社はこれらの層に同じゲーム体験を提供しているわけではなく、それぞれの層に課金額に見合ったゲーム体験になるようにゲームのバランスを調整していると考えられる。このように考えると、ソーシャルゲームの開発会社にとって最も意見を聞いてあげなければならないユーザは廃課金・重課金のユーザであり、微課金・無課金ユーザはピーピー怒ったところで、”反省してまーす(ちっ、うるせーな)”と思っていればいい人たちということになる。ゲームのバランス調整やイベントアイテムなどで炎上する場合というのは、廃課金・重課金のユーザを優遇する施策を行った結果、微課金・無課金ユーザがブチ切れるという形式であることがほとんどだろう。
P2Wの要素が必要
課金額によって異なるゲーム体験を提供するためには、ゲームの中にP2W(Pay to Win)の要素を導入する必要がある。ほとんどすべてのソーシャルゲームで明示的に”このゲームはP2Wです”とは言わないが、(少し考えればすぐにわかるけど)なるべくわかりづらい形式で導入されている。ガチャで入手できるキャラが単純に強い場合もあるし、ゲームを進めたり、イベントで何らかのポイントを稼ぐためにスタミナ(ライフ)が必要だったりという形式になっており、お金をかけることで、他のプレイヤーより有利にゲームをプレイできるようになっている。
典型的には、イベント中に各プレイヤーがどれだけのポイントを稼げたかを競う形式のゲームで、プレイヤーの上位は順位がゲームのホームページ上に掲載されるというものがある。この競争で上位に食い込むためには、イベント期間中のガチャから排出されるキャラ(特効キャラ)を入手し、スタミナ課金してイベントを周回する必要がある。結果として、ゲームのホームページ上に掲載されるプレイヤーは廃課金・重課金者のリストになっているということがほとんどである。
微課金・無課金は基本的にはこの競争に参加することは不可能であるし、重課金者も廃課金の壁に阻まれて上位に入ることはできないということで、異なるゲーム体験が提供されるということになるだろう。P2Wというゲーム形式は一般的に(特に微課金・無課金)ユーザには嫌われるし、廃課金・重課金勢にとっても、承認欲求を満たすうえで札束で殴っているとはあまり思われたくないものなのかもしれない。”P2Wではありません”という態を保ちながら、いかにこっそりP2Wの要素を忍び込ませることができるかがソーシャルゲームのゲーム設計者の腕の見せ所なのかもしれない、
ソーシャルゲームのマネタイズとゲームの公平性は両立しない
ポーカーのようなギャンブルや金融取引では、(たとえそれが建前だけであっても)それらのゲームがいかに公平に行われているかを担保する必要がある。イカサマや不正、差別だらけのギャンブル場では多くの参加者を募ることが難しいためだろう。参加者は平等・公平に扱われており、特定の参加者が有利にゲームに参加していることが無いということを利用規約や法律で定めていることが通常である。
一方で、ソーシャルゲームではP2Wの要素がマネタイズのために不可欠であるし、ランキングを競うようなゲーム形式では、課金額が多いプレイヤーが有利になるようにゲーム設計を行う必要がある。おそらく、このソーシャルゲームのゲーム設計と本来は公平・平等でなければならないポーカーのゲームルールというのが不整合を引き起こしている、というのがポーカーアプリの問題点なのかもしれない。
純粋なポーカープレイヤーであれば、上位ランクに入るプレイヤーはポーカーがうまいプレイヤーであるべきと思うかもしれないが、現実の設計が課金額が多いプレイヤーほど上位にランクインしやすくなる作りになってしまうということで、炎上していた部分があるのかもしれない。この問題は誰がゲームの監修をしているかとか、ゲーム開発会社の体質、ゲームプロデューサー/ディレクターの企画力云々などとは全く関係なく、回避しようがない問題なのかもしれない。
マネタイズの方法をソーシャルゲームのそれから月額課金(サブスク)のみにすればよいと思うかもしれないが、これを実現するには相当数のプレイヤーを確保し、かつ、それを保持(リテンション)しなければならない。年間10億円の売上をサブスクだけで上げるために5~10万人ほどのプレイヤーを確保しなければならないが、そもそも最初から有料のゲームでは利用を開始するまでの壁が高くなるし、飽きてしまったり、負けてばかりのプレイヤーはすぐに解約してしまうという意味で、現実的な方策とは言えないだろう。
最後に:カジノにおけるポーカーの収入構造
昨年、人々はポーカーで10億ドル以上を稼ぎました。そしてカジノはそういった人たちのおかげで270億ドルを稼ぎました。(Last year people won more than one billion dollars playing poker. And casinos made twenty-seven billion just by being around those people.)
Samantha Bee
なんでこんなどうでもいいことをだらだらと書いてるんだよと思うかもしれないが、こういった構造は実をいうとカジノにおけるポーカーの収入構造にも類似性を見いだせる気がしたからである。Youtubeの動画でプロポーカープレイヤーの人がポーカーによるカジノの収入なんて微々たるものだと説明したものを見かけた。”そんなわけないだろ、カジノから金もらってるならこの動画はプロモーションを含みますって表示しろや”と思ったのであるが、何となくそう思い込んでしまう理由があるのかもしれないと考えた。
ポーカーで日銭を稼ぐプロプレイヤーは実をいうとローステークスか高くてもミドルステークスのテーブルでプレイしていることが多いのではないだろうか?ハイステークスは1回のゲームで数百万円といった金額が動くゲームであり、日銭を稼ぐ必要がある人たちがプレイするゲームではないように思える。要するにローステークスの手数料だけを見ていると、”カジノの収入なんて微々たるもの”という主張もあながち間違いではないのかもしれない。現実には、ソーシャルゲームと同様の構造が存在しており、
- ハイステークス・・・廃課金
- ミドルステークス・・・重課金
- ローステークス・・・微課金
という対応関係を考えれば、容易に理解できるのではないだろうか。カジノの収入の大部分を支えているのはハイステークスのテーブルの収入であり、ローステークスのテーブルはハイステークスでプレイする人たちに優越感を与えるために存在しているという側面もあるのかもしれない(収入と運営コストを比較するとローステークスはほとんど利益を上げていない可能性がある)。
一般的に、ステークスが上がるほどRakeは下がると思うかもしれないが、賭け金の増加率を考えれば手数料の負担率はハイステークスの方が圧倒的に重いことは容易に理解できるだろう。例えば、ハイステークスのRakeが2.5%でローステークスのRakeが5%だったとする。しかし、賭け金が100倍近く違うため、ハイステークスのテーブルは1ゲーム当たりローステークスのテーブルの50倍近い手数料を負担していることになる(これがカジノの収入になる)。ハイステークスのテーブル1つの収入がローステークスのテーブル50個分に相当するということで、カジノの収入がどの層の売り上げに依存しているかは容易に理解できるだろう。
また、ポーカーは手数料を除けば、ゼロサムゲームであるため、手数料を多くとられるテーブルほど、損をしているプレイヤーが増えることになる。言い換えれば、プレイヤーのスキルが同レベルであれば、ステークスが上がれば上がるほど損をしやすくなるという構造が存在する。しばしば、ステークスが上がるほどプレイヤーが強くなるために勝てなくなる(実際にそうかもしれないけど)と思うかもしれないが、本当のことを言うと手数料が高くなるから勝ちづらくなるという側面も存在しており、ハイステークスのプレイヤーはポーカーで損をしている人がほとんどであると推測される。この層の人たちは、ギャンブルで金を無駄遣いすることを楽しんでいる金持ち連中というのが実態なのだろう。
