概要
筆者は個人でポーカーゲームアプリ”Exotic Poker”を開発して、2026年2月3日にGoogle Play Storeにリリースした。Google Play ストアのリンクを貼っておく。

ポーカーゲームアプリは、RPGやストラテジーゲーム、ノベルゲームみたいなのを開発するのと比較すると、ゲームのルールや仕組みに変更の余地がない分だけ開発すべきものが明確であり、難易度は低めであると思われる。しかし、それでも個人でのゲーム開発は難しいし、苦行に近い作業を強いられるものだった。本稿では、実際に開発を行った感想やネットやYoutubeで見かけた個人ゲーム開発の難しい点について簡単にまとめてみた。
すべての作業を自分でこなす必要がある
自分のゲームを作ってみたいと考えた個人のほとんどは、開始してから1週間以内ぐらいでやる気をなくしてアイデアを放り投げることになるらしい。プログラミングスキルが無かったり、プログラムコード自体を書くことができても、何から手を付けていいか分からないまま、時間が過ぎてしまい、結局何もせずに終わるというのがありがちなパターンなのだろう。
実際の作業を始める前に、何をやるか、あるいは、何をやらないかを明確にしておく必要がある。ゲームを完成させるまでに必要なタスクを可能な限り洗い出して、その項目を一つずつ順番につぶしていくようなプロジェクト管理能力が必要であり、そういった能力は社会人として働いていても個人一人で持っていることは稀なのではないだろうか。ソフトウェアを開発する仕事をしていても、そのソフトウェア全体のソースコードを把握しているということはまずないし、全体の中の一部だけを開発して、なぜかシステムが全体として動いているという感覚になることが通常だろう。すべての作業を自分一人で担当して完成させるという経験を多くの社会人は持つことが無いと推測される。
反対に、プロジェクト管理を仕事にしていたりする人は自分で作業をするということができないことが多い気がする。プロジェクト管理は基本的に他人に仕事を割り振って任せるのが仕事であるが、個人でゲーム開発する場合は洗い出したタスクやスケジュールを自分自身ですべてこなす必要がある。完璧に仕上げた計画とスケジュールを作成したけど、その作業をすべて自分でこなさなければならないとなった時点で絶望してしまう人もいるかもしれない。
ゲームを開発する際に何から手を付けたらいいかという問題だが、筆者は最初にゲームの根幹のロジックを完成させた方が良いと考える。グラフィックやBGM、シナリオやエフェクトなどは根幹のゲームシステムという骨組みに付ける肉であるけど、骨がないところで肉だけ付けようとしても結局まとまりがないものが出来上がってしまうように思える(作るものが明確で慣れている人であればそうでもないのかもしれないけど)。
中身の数値だけで動く仕組みを作って、その数値遊びが面白いものなのかというのを最初にチェックする方が良いのではないだろうか。仮に、グラフィックやBGM、シナリオやエフェクトが無くても、それだけで立派にゲームと言えるものになってることも多いように思える。筆者自身、開発当初は画面がなくコマンドラインでポーカーがプレイできるようにするところから開発して、それができてから画面から操作できるように開発するという手順を採用したという経緯がある。
完成させるのが難しい
計画を立てて開発を始めることがそもそも難しいと書いたが、一度環境を整えて開発が軌道に乗り始めると、それっぽく動くゲームの開発が進むようになる。人によってはこの過程が楽しいと思えるようになるかもしれない。それでも、実際にゲームを完成させてリリースできるようになるまでには大きな壁が立ちはだかっているように思える。
一番ありがちな問題は、計画通り開発が進まないということだろう。技術的知識が未熟だったりすると、当初立てた計画から作業の進捗がどんどん遅れだすということが生じる。コードを書いても思った通り動かなかったり、アプリが落ちてしまう原因を特定するために数日もかかってしまうという事態は普通に生じる。”この作業は一体いつ終わるんだ”みたいな絶望感に負けて開発をあきらめてしまうというのはありがちなパターンではないだろうか。
もう一つありがちな問題は、当初考えていたゲームの設計や仕様が矛盾しており、そもそもゲームとして成立し得ないということが開発中に発覚するということである。俗に言われる”詰む”といわれる状態である。この状態に陥った場合は、問答無用でゲームオーバーであり、ゲームの設計を最初から考え直す必要がある。それまで開発してきたものの大部分をゴミ箱行きにしなければならないということで、精神的に参ってしまうということもありそうである。
最後の問題は、筆者自身も直面した問題であるが、自分が作っているゲームがショボすぎて我慢できなくなるという問題である。個人であれ同人サークルであれゲームを開発しようという人たちは、何かしら気に入ったゲームがあって、それを越えるゲームを生み出したいという願望を抱いて開発を始めるのだろう。ただ、実際に作業を始めると、その気に入っているゲームが到底越えられない壁として目の前に現れることになる。
自分のゲームがショボすぎてやる気を失くしてしまうということもあるだろうし、ありがちな方法はさらに高度な機能を追加して、なんとかショボさをごまかそうとすることだろう。筆者の場合は、もともと一人用のゲームでNPC相手にポーカーができれば良いと思っていたのであるが、出来上がってみると、なんかショボくね?という感想を持ってしまった。やはりエムホールデムやポーカーチェイスみたいなマルチプレイの機能が欲しくなってしまい、結局追加することにしてしまった。
結果として何が起こるかというと、開発期間の延長であり、元々2,3ヶ月間で終わらせるはずだった開発期間が6ヶ月になってしまった。加えて、マルチプレイ機能を実現するためにクラウドサービスを利用する必要が生じて、何の知識も持っていなかったのにGoogle Cloudをマニュアル本片手に操作するという羽目になってしまった。とりあえず完成したからよかったものの、いきなり未知の技術に挑戦するという行為はしばしばプロジェクトの破綻を招くことになるので注意した方が良いと思う。
どんなクソゲーでも完成させてリリースしただけで、ゲーム開発者としては他の開発者を圧倒する実績になると言われるが、それはきっとそうなんだろうと思う(そもそも完成させない限り実績はゼロのままである)。どんなクソゲーでも手元で動くものがあって、”なんだこのクソゲーは、作った奴バカじゃねえの”と思えるだけでも、人間は楽しいと思える性質を持っているんじゃないかと最近は思うようになった。多少ショボく見えても、とりあえず完成させてリリースすることを目標にした方が良いのかもしれない。
ダウンロードされない
筆者はこの問題の解決策を現状知らないが、個人開発のゲームは基本的には社会に認知されないということである。お金を稼ぐ目的であるにしても、ただの趣味で開発したものであるにしても、開発したゲームはプレイされてこそ価値があるものだろう。結局、世の中の人に知ってもらうためには、個人開発のゲームであっても広告宣伝というものが必要になる。昔みたいにテレビと新聞ぐらいしか広告媒体が無いとなれば絶望的であるが、現在はクラウドソーシングなどを通じて利用できる媒体やゲームの宣伝を請け負うYoutuberみたいな人達もいるようなので多少の費用をかけてでも利用した方が良いのだろう。
筆者の場合は、開発したゲームは現状毎日プレイして楽しめるものになっているかというと、そうはなっていないというのが正直な感想である。自分自身がやらないことを他人がやってくれることを期待する、というのはそもそも間違っているだろう。まずは自分が毎日プレイして楽しいと思えるレベルになるまでアプリの機能をブラッシュアップする必要がある。そういう状態になれた時点で、改めていくつかの方策を試していきたいと考えている。
それでも個人で開発することのメリット
最後に、そんなに大変なのに個人でゲーム開発をするメリットなんてあるのか、という点について書いて終わりにしよう。
世の中に流通するほとんどのゲームは、誰か一人の思うとおりに作った結果出来上がったものではないだろう。多くの人が協力して開発した結果、すべての人が何らかの妥協をして、”こういう風にしたい”という思いをあきらめた結果として世に出されていることがほとんどだろう。それでも、名作と言われるゲームはたくさんあるだろうし、もちろん結果として迷作とか特級呪物になってしまうこともあるかもしれない。
個人で開発することのメリットは、こういった妥協を強いられることが無いということだろう。結果として、妥協しないために永遠に完成しないということになることも多いのだろうけど・・・自分が思った通りのものを開発できるというメリットは数多あるデメリットを鑑みても捨てがたい魅力であるように思える。
また、筆者のように将来的にやりたいと思っていることに対して、どうしても”自分が所有しているゲーム”であることが必要になってしまうこともあるかもしれない。筆者はポーカーについていろいろ調べている(もともとは人工知能や機械学習について調べようとしていたのであるけど)過程で、自分で独自のポーカーのルールを考えて、他の人がプレイできるようにしたいという願望を持つようになってしまった。この願望を叶える方法はゲーム会社で偉くなって自分がプロデューサーやディレクターの立場でゲーム開発に関われるようになるか、自分個人でゲームを開発するしかないということになる。筆者の場合は前者の選択肢はあり得ないので、必然的に後者の方法を選択するしかないということになる。メリット云々の問題ではなく、単純に他に選択肢がないからやっただけ、というのが現実である。
所有権が自分にあるということも個人でゲーム開発をするメリットとしては重要だろう。会社で仕事をするということは、給料の代わりに自分がした仕事の所有権を会社に売り渡すということを意味している。大抵の場合は会社を辞める時にこのことを実感することが多いのだろうと思うが、それまで積み上げてきたつもりの仕事が、実は自分のものではなかったと気づくことになる。自分が所有する資本としてゲームを開発できるということは相応に意味があることなのではないだろうか。
今後はAIサービスの発展に伴って、個人でのゲーム開発を行う壁は少しずつ低くなってくるのかもしれない。それでも、本稿で上げた壁は消えてなくなるものではないので、うまく対応策を練った上で挑戦してもらえればよいのではないかと思う。
