m HOLD’EMの攻略方法 – ルール変更について –

確率論

概要

 以前にソーシャルゲームのm HOLD’EM(エムホールデム)について、特殊なルールが採用されているために、リンパー/コーラーのような戦略が有効であるということを説明した記事を書いた。

しかし、2025/7/1からルールが変更されたようであり、この記事の内容は修正が必要なものになってしまったかもしれない。改めてゲームのルールに対応した攻略方法を考察してみよう。現時点ではよくわからない部分もあるので、参考程度と考えてほしい。

変更点

 ルールについて、以下の点が変更になったようである。

  1. スタックの最大バイインが500bbから250bbに変更(m1は一部の期間で125bb)
  2. アンティが0.25bbから0.5bbに変更(m1は一部の期間で1bb)

依然としてディープスタックであるが、前回と比較して緩和されており、ブラフが有効になりやすくなるとアピールされている。プレイヤーの参加率を下げたくないためか、代わりにアンティを引き上げている。ソーシャルゲームの性質上、プレイヤーが短時間で多くのゲームに参加できるように工夫しているためだろうと推測される。

ゲームの特徴

 500bb戦ではインプライドオッズが大きい結果として、以下のような特徴がゲームに生じると書いた。

現象説明
VPIPが高くなる多くのハンドが「潜在的に強い役になる」ので参加価値あり
マルチウェイになりやすい多くのプレイヤーが「今は弱いが、当たれば大きい」ハンドで参加
フロップ以降のポーカーが複雑化誰が何を持っているかわかりにくく、ナッツ指向のプレイが必要
ブラフが通りにくくなる相手が「何か当たってる」率が高くなるので、安易なスチールは危険
スロープレイに戦略的価値逆転されない範囲で役を作らせてベットを引き出すような運用が必要

スタックが小さくなるものの、アンティが高いため、依然としてプレイヤーの参加率が高いゲームであると考えられる。上記の性質のうち上の3つは特に変更が無いと推測される。ディープスタックであるため、スロープレイに一定の戦略的価値があるのもおそらく変更がないだろう。変更がありそうなのは、ブラフの要素であり、マルチウェイではやはりブラフの有効性が落ちるが、アンティが0.5bbに増えているため、プリフロップにおけるスティールの有効性が上がると推測できる。

 前回のルールでは、プリフロップのベットが大きくなりづらいために、リンプインでとりあえずエントリーするという戦略が有効であると書いていた。今回のルールでは、アンティの上昇により、プリフロップのポットが大きくなりやすくなるため、比較的広い手札で3ベットぐらいまでは強気でベットして、プリフロップで決着をつけるという選択肢も出てくるだろう。これにより、リンプインの頻度は下げ、オープンレイズの比率を上げた方が良いことになるかもしれない。

 3ベットによるスティールが有効になりそうなので、UTGやMPでのエントリーを減らす(3ベットにコールしたくないハンドはフォールド気味にする)、BTNやSBにおける3ベットのハンドレンジを広めにするなど、ポジションによるハンドレンジの差異が大きめになるかもしれない。後で、ハンドレンジの構築例みたいなのは考えてみよう。とはいえ、3ベットでも依然として100bb戦における2ベットぐらい(スタックの3~4%)なので、かなり広範囲の手札で3ベットにもコールできることには注意しておく。

戦略の変更点

 前回の記事では500bb戦における戦略の特徴を以下のように書いていた。

 100bb戦500bb戦
(低ランク)ポケットペアセットマインはオッズが合わないセットマインが非常に有効
Suited-Connector低ランクはフォールド幅広くプレイ可能
トップペア(ワンペア)積極的にバリューベット慎重にプレイ(ツーペアが出やすい)
ドローハンドセミブラフを活用ターン以降成立した場合に特大ベット
リバーでの強ハンドポットベットあたりが上限ポット3倍以上ベットも可
VPIP20~25%25~30%

現時点では定かでないが、以下のような変更が生じる可能性がある。

  1. セットマインは依然として有効、マルチウェイの可能性が高いため、手札はSuitedやConnectedに寄せた方が良いというのも変わらなそう。
  2. トップペアトップキッカー(TPTK)当たりの役が判断に迷う(強気で攻めてもよくなる?)かもしれない。原因がマルチウェイにあるのであれば、今回のルールでもTPTKは慎重にベットになるだろう。
  3. ストレートドローやフラッシュドローのセミブラフはヘッズアップの場合は利用を検討、マルチウェイではやはりヒット待ちだろうか。
  4. 依然としてディープスタックであるため、手札のナッツ志向やリバー特大ベットは変わらないと思われる。
  5. 最大スタックの減少はVPIPを下げる要因であるが、アンティが上がっているため影響は相殺されると思われる。おそらく、30~40%前後ぐらいのVPIPが適正水準と推測される。
  6. 前回のルールでは、フロップで滑ったら即フォールドでよかったが、今回のルールではプリフロップのポットが膨らみやすいため、滑った場合のフォールドの判断は少し忍耐する方向に調整する必要がありそう。3ベットでヘッズアップの場合は、箸にも棒にも引っかからない場合にはブラフの活用を考える必要があるかもしれない。マルチウェイの場合はやはり早々に損切した方がよいと思われる。
  7. リバーでのブラフはヘッズアップである場合は利用できる頻度が増えるかもしれない。相変わらずハンドレンジは広いと思われるし、スロープレイもあるため、ブラフの運用は感覚的なものであるかもしれない(相手のアクションが弱い、相手から見て自分が(ショーダウンバリューないけど)強そうに見える、などの条件がある場合にブラフを仕掛けるか判断する)。3人以上残っている場合は依然としてブラフで全員降ろすは運用が容易ではないような気がする。

推測で適当なことを書いて、全然違ったら嫌な感じだけど・・・まあ、しばらくプレイしたら記述の精度も上げられるだろう。

ハンドレンジチャート

 アンティが大きいため、プリフロップにおける3ベットによるスティールに有効性がありそうと書いた。そのため、各ポジション毎のオープンレンジ、3ベットレンジの例のようなものを示しておくことに一定の意味があるかもしれない。ルール上、マルチウェイになりやすいと思われるため、絶対にこうでなければならないという類のものではないが、自分のハンドレンジを決める際の参考に利用すればよいだろう。

 ChatGPTによると、変更されたルールの下では、各ポジションのオープンレンジ、3ベットレンジの比率は大体以下の表ぐらいになるとのことだった。オープンレンジのVPIPが30%ぐらいなので、VPIPを40%ぐらいに調整したい場合は1.3倍ぐらいにすればよいだろう。3ベットの比率は100bbアンティ無しのゲームと比べて、3倍くらいの比率になっているように見える。

ポジションオープンレンジ3ベットレンジ
UTG18%
MP (HJ)22%6~8%
CO28%8~10%
BTN45%11~15%
SB38%13~16%
BB11~15%

BBのコールレンジはBTNのオープンレンジぐらいで考えればよいかもしれない。具体的な手札の選択はプレイヤーの好みに依存するので一概に言えないが、オープンレンジはマルチウェイ寄り、3ベットレンジはヘッズアップ寄りにすればよいだろう。以下では、オープンレンジを5人の場合の勝利確率の高い順、3ベットレンジを3人の場合の勝利確率の高い順で選んだ場合のハンドレンジチャートを示しておく。一つの例に過ぎないので、好みによってAxs(特にA5s)やT9s,98s,76s、ローポケ(66~22)などの投機的なハンドを3ベットに入れてもよいだろう。

[UTG]

[MP]

[CO]

[BTN]

[SB]

半日だけプレイした感想であるが、参加している人たちのプレイスタイルはあまり変化していないように感じる(リンパー/コーラーが健在な感じ)。今後ルールに慣れてきたときに、3ベットが飛び交うようになるのか、やはりリンパー/コーラーのままなのかは現時点ではわからない。

おまけ:ハンドレンジチャート

 上記の画像を作成するために使ったツールのリンクを貼っておく。自分でVPIPを調整してみたい場合などに利用すればよいだろう。