※この画像はChatGPT画伯による”A surreal imaginary world with a cyberpunk aesthetic”だそうです。
問題
複素数の二次方程式
\[ \small \alpha z z^\ast+\beta z+\gamma z^\ast+\delta = 0 \]
について、\(\small z\)を求めるという問題について、一応解析的に解けそうなので解いてみよう。\(\small \alpha,\beta,\gamma,\delta\)は複素数でも良いと仮定しよう。\(\small z^2,z^{\ast2}\)を含めるとややこしくなるので、とりあえず二次の項は上記の項だけに限定する。
計算
定数係数をそれぞれ
\[ \small \begin{align*} &\alpha = \alpha_1 + \alpha_2i \\ &\beta = \beta_1 + \beta_2i \\ &\gamma = \gamma_1 + \gamma_2i \\ &\delta = \delta_1 + \delta_2i \end{align*} \]
と表す。\(\small z=x+yi\)とおいて、方程式の実部と虚部を計算すると
\[ \small \begin{align*} &\alpha_1(x^2+y^2)+(\beta_1+\gamma_1)x+(\gamma_2-\beta_2)y+\delta_1 = 0 \\ &\alpha_2(x^2+y^2)+(\beta_2+\gamma_2)x+(\beta_1-\gamma_1)y+\delta_2 = 0 \end{align*} \]
を得る。第二式に\(\small \alpha_1/\alpha_2\)を掛けて第一式から引くと
\[ \small \left(\beta_1+\gamma_1-\frac{\alpha_1}{\alpha_2}(\beta_2+\gamma_2) \right)x+\left(\gamma_2-\beta_2-\frac{\alpha_1}{\alpha_2}(\beta_1-\gamma_1) \right)y+\left(\delta_1-\frac{\alpha_1}{\alpha_2}\delta_2\right) = 0 \]
を得る。したがって、
\[ \small \begin{align*} y &= -\frac{\beta_1+\gamma_1-\frac{\alpha_1}{\alpha_2}(\beta_2+\gamma_2) }{\gamma_2-\beta_2-\frac{\alpha_1}{\alpha_2}(\beta_1-\gamma_1)}x-\frac{\delta_1-\frac{\alpha_1}{\alpha_2}\delta_2}{\gamma_2-\beta_2-\frac{\alpha_1}{\alpha_2}(\beta_1-\gamma_1)} \\ &= px+q \end{align*} \]
を得る。これを第一式に代入すれば\(\small x\)に関する二次方程式を得ることができるから、二次方程式の解の公式で\(\small x\)を求めれば良いということになる。通常の二次方程式同様に解が二つ存在することに注意する。\(\small y=px+q\)を用いて式を書き直すと
\[ \small \begin{align*} &ax^2+bx+c = 0 \\ &a = \alpha_1\left(1 + p^2\right) \\ &b = 2\alpha_1pq + (\beta_1+\gamma_1)+(\gamma_2-\beta_2)p \\ &c = \alpha_1q^2+(\gamma_2-\beta_2)q+\delta_1 \end{align*} \]
と表すことができるだろう。\(\small x\)は実数であると仮定しているため、この二次方程式に実数解がない場合は解が存在しないということになる。
拡張
上記のように考えると、複素数の二次方程式を拡張して
\[ \small \alpha z^2+\beta z z^\ast+\gamma z^{\ast2}+\delta z+\epsilon z^\ast+\zeta = 0\]
について、\(\small z\)を求めるという問題についても解析的に解けそうなので解いてみよう。\(\small \alpha,\beta,\gamma,\delta,\epsilon,\zeta\)は複素数でも良いと仮定する。
定数係数をそれぞれ
\[ \small \begin{align*} &\alpha = \alpha_1 + \alpha_2i \\ &\beta = \beta_1 + \beta_2i \\ &\gamma = \gamma_1 + \gamma_2i \\ &\delta = \delta_1 + \delta_2i \\ &\epsilon = \epsilon_1 + \epsilon_2i \\ &\zeta = \zeta_1 + \zeta_2i \end{align*} \]
と表す。\(\small z=x+yi\)とおいて、方程式の実部と虚部を計算すると
\[ \small \begin{align*} &(\alpha_1+\beta_1+\gamma_1)x^2+(\beta_1-\alpha_1-\gamma_1)y^2+2(\gamma_2-\alpha_2)xy+(\delta_1+\epsilon_1)x+(\epsilon_2-\delta_2)y+\zeta_1 = 0 \\ &(\alpha_2+\beta_2+\gamma_2)x^2+(\beta_2-\alpha_2-\gamma_2)y^2+2(\alpha_1-\gamma_1)xy+(\delta_2+\epsilon_2)x+(\delta_1-\epsilon_1)y+\zeta_2 = 0 \end{align*} \]
を満たす\(\small x,y\)を求めれば良いということになる。第二式から
\[ \small \frac{\beta_2-\alpha_2-\gamma_2}{\beta_1-\alpha_1-\gamma_1} \]
倍した第一式を引くことで、\(\small y^2\)を消去した式を得ることができる。これは
\[ \small ax^2+bxy+cx+dy+e = 0 \]
という形式をしているので、
\[ \small y = -\frac{ax^2+cx+e}{bx+d} \]
という解を得ることができる。これを第一式に代入して\(\small x\)について解を求めればよい。この方程式は\(\small x\)に関する四次方程式になるため、フェラリの公式で解を求めることができる。まあ、それは解析解と言えるのかという問題はあるかもしれないけど・・・四次方程式の解なので、解の組み合わせは最大で四通り存在することになる。
何に使う?
そんな大学生の宿題みたいな問題を解いてどうするんだよ、という話であるけど、
\[ \small \frac{\partial \psi(x,t)}{\partial t}\frac{\partial \psi^\ast(x,t)}{\partial t} = \frac{m^2c^4}{\hbar^2}\psi(x,t)\psi^\ast(x,t)+c^2\frac{\partial \psi(x,t)}{\partial x}\frac{\partial \psi^\ast(x,t)}{\partial x} \]
みたいな偏微分方程式を数値的に解きたい場合、陽解法でもこういった問題が登場するような気がしたためである。離散化すると
\[ \small \frac{\psi_{j,k+1}-\psi_{j,k}}{\Delta t}\frac{\psi^{\ast}_{j,k+1}-\psi^{\ast}_{j,k}}{\Delta t} \qquad\qquad\qquad\qquad\qquad\qquad\qquad\qquad \\ \small \qquad\qquad = \frac{m^2c^4}{\hbar^2}\psi_{j,k}\psi^{\ast}_{j,k}+c^2\frac{\psi_{j+1,k}-\psi_{j-1,k}}{2\Delta x}\frac{\psi^{\ast}_{j+1,k}-\psi^{\ast}_{j-1,k}}{2\Delta x} \]
であるから、\(\small z=\psi_{j,k+1}\)と置けば
\[ \small zz^{\ast}-\psi^{\ast}_{j,k}z-\psi_{j,k}z^{\ast}+\psi_{j,k}\psi^\ast_{j,k}-\qquad\qquad\qquad\qquad\qquad\qquad\qquad\qquad\qquad \\ \small \left(\frac{m^2c^4}{\hbar^2}\psi_{j,k}\psi^{\ast}_{j,k}+c^2\frac{\psi_{j+1,k}-\psi_{j-1,k}}{2\Delta x}\frac{\psi^{\ast}_{j+1,k}-\psi^{\ast}_{j-1,k}}{2\Delta x} \right)\Delta t=0 \]
が解くべき問題になるだろう。時間については前方差分、座標については中心差分で計算していることに注意する。この場合、\(\small \alpha_2=0\)であるから
\[ \small y = -\frac{\beta_2+\gamma_2 }{\beta_1-\gamma_1}x-\frac{\delta_2}{\beta_1-\gamma_1} \]
と定めれば良いだろう。ただ、解が二つあるので、どちらを採用するべきかは試してみないとわからない。適切な解を選ばないと、振動した解になってしまうかもしれないことに注意が必要だろう。なお、ディラック方程式を数値的に解くならば、この方程式を解くのかなと思ったが、いまのところ定かではない・・・複素関数に関する一階微分の二乗を含む微分方程式というのは、時間発展について4つの解に分岐する、すなわち、四次方程式を強引に4元一次方程式の形式に変換したのがディラック方程式ということなのかもしれない。
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