相対性理論における楕円運動

物理学

相対性理論におけるエネルギーとポテンシャル

 古典力学における楕円運動についていくつかの稿で考察してきたが、これを相対性理論の枠組みに拡張することを考えよう。古典力学における楕円運動のエネルギーは

\[ \small E = \frac{p^2}{2m}-\frac{GmM}{r} = -\frac{1}{2}\frac{GmM}{a} \]

であったが、これを相対性理論のエネルギーの式

\[ \small E^2 = m^2c^4+p^2c^2+EV \]

の形式に当てはめよう。

 古典力学におけるエネルギーの式に\(\small mc^2\)を足して、平方根の式に直すと

\[ \small \begin{align*} E &= mc^2+\frac{p^2}{2m}-\frac{GmM}{r} \\ &\approx \sqrt{m^2c^4+p^2c^2-mc^2\frac{2GmM}{r}} \end{align*} \]

である。ポテンシャルにかかっている\(\small mc^2\)を\(\small E\)に置き換えれば、相対性理論におけるポテンシャル関数は

\[ \small V = -\frac{2GmM}{r} \]

と得ることができる。したがって、相対性理論におけるエネルギーは

\[ \small E^2 = m^2c^4+p^2c^2-E\frac{2GmM}{r} \]

と表すことができる。また、一般相対性論における等価原理から重力が働く質量は相対論的質量\(\small m=E/c^2\)であったからポテンシャル関数における重力質量\(\small m\)は静止質量の\(\small m\)と区別しなければならない。そのため、エネルギーの式を

\[ \small E^2 = m^2c^4+p^2c^2-\frac{E^2}{c^2}\frac{2GM}{r} \]

と表しておく。\(\small E\)について解くと

\[ \small E = \sqrt{\frac{m^2c^4+p^2c^2}{1+\frac{2GM}{c^2r}}} \]

である。古典力学におけるエネルギーが

\[ \small \begin{align*} E &= \sqrt{\frac{m^2c^4+p^2c^2}{1+\frac{2GM}{c^2r}}}-mc^2 \approx\sqrt{m^2c^4+p^2c^2}\left(1-\frac{GM}{c^2r} \right) -mc^2 \\ &\approx mc^2+\frac{p^2}{2m}-\frac{GmM}{r} \end{align*} \]

と近似できることは理解できるだろう。

 古典力学とつじつまを合わせるために困惑するのは、ポテンシャルの値が2倍であることである。もちろん、相対性理論における軌道半径が古典力学における軌道半径の半分になるわけではないだろう。これは、古典力学における運動方程式の導出方法と相対性理論におけるそれが異なることに原因がある。古典力学では

\[ \small \frac{d^2x}{dt^2} = -\frac{GM}{r^3}x \]

のように計算していたが、相対性理論では運動量の時間微分から計算する必要がある。すなわち

\[ \small \frac{dp_x}{dt} = -\frac{GM}{r^3}x \]

であるという前提から運動方程式を求める必要がある。ポテンシャル関数を座標について微分して運動方程式を求めるという操作は相対性理論では適用できないということである。

 それでは、ポテンシャルの値が2倍であるということがどのような影響を持ってくるだろうか?円錐座標系におけるポテンシャル関数

\[ \small V =x\frac{dp_x}{dt}+y\frac{dp_y}{dt}+z\frac{dp_z}{dt}+c^2T\frac{dm}{dt} \]

と上記の計算がどのような関係にあるかを計算しよう。手前の3項の合計は

\[ \small x\frac{dp_x}{dt}+y\frac{dp_y}{dt}+z\frac{dp_z}{dt} = -\frac{E}{c^2}\frac{GM}{r} \]

と求めることができる。

\[ \small V = -\frac{E}{c^2}\frac{2GM}{r} \]

であったから

\[ \small c^2T\frac{dm}{dt} = \frac{E}{c^2}c^2T\frac{d^2T}{dt^2} = -\frac{E}{c^2}\frac{GM}{r} \]

が成り立てば、上記の式が成立することになる。これが、局所時間\(\small T_{xyzt}\)が満たさなければならない運動方程式ということになる。この式は\(\small dm/dt=0\)では成立しえないため、静止質量\(\small m\)が定数であるという仮定は相対性理論では正当化できないということになるかもしれない。以上のことから、古典力学と比較して相対性理論のポテンシャル関数が2倍になるのは\(\small c^2T(dm/dt)\)という項が余計に追加されているためであり、この項が\(\small xyz\)座標軸の方向と同じ分だけポテンシャル関数に寄与しているためであると考えることができるだろう。

楕円運動の運動方程式

 上記で計算したエネルギーに対応する運動方程式を求めよう。運動量を

\[ \small p_\mu = \frac{E}{c^2}\frac{dq_\mu}{dt} \]

と定義していたのであったから

\[ \small \frac{dq_\mu}{dt} = \frac{p_\mu c^2}{E} = \frac{p_\mu c^2}{\sqrt{ m^2c^4+p^2c^2}}\sqrt{1+\frac{2GM}{c^2r}} \]

を得る。時間についてもう一回微分すれば

\[ \small \begin{align*} \frac{d^2q_\mu}{dt^2} = & \frac{c^2}{\sqrt{ m^2c^4+p^2c^2}}\sqrt{1+\frac{2GM}{c^2r}}\frac{dp_\mu}{dt} \\ & -\frac{p_x c^2}{\sqrt{ m^2c^4+p^2c^2}^3}\sqrt{1+\frac{2GM}{c^2r}}\left[\left(p_x\frac{dp_x}{dt}+p_y\frac{dp_y}{dt}+p_z\frac{dp_z}{dt}+mc^2\frac{dm}{dt}\right)c^2 \right] \\ & -\frac{p_\mu c^2}{\sqrt{ m^2c^4+p^2c^2}}\frac{GM}{c^2r^2\sqrt{1+\frac{2GM}{c^2r}}}\frac{dr}{dt} \end{align*} \]

を得る。運動量の時間微分の式を代入してうまく計算すると

\[ \small \begin{align*} \frac{d^2q_\mu}{dt^2} = &-\frac{GM}{r^3}q_\mu+\frac{GM}{r^3}\frac{p_\mu}{E^2}\frac{1}{1+\frac{2GM}{c^2r}}\left[\left(p_xx+p_yy+p_zz+m\frac{r^2}{T}\right)c^2 \right] \\ &-\frac{p_\mu c^2}{E}\frac{GM}{c^2r^2}\frac{1}{1+\frac{2GM}{c^2r}}\frac{dr}{dt} \end{align*} \]

を得る。運動量を速度に直すと

\[ \small \begin{align*} \frac{d^2q_\mu}{dt^2} = &-\frac{GM}{r^3}q_\mu+\frac{GM}{c^2r^3}\frac{dq_\mu}{dt}\frac{1}{1+\frac{2GM}{c^2r}}\left[x\frac{dx}{dt}+y\frac{dy}{dt}+z\frac{dz}{dt}+\frac{r^2}{T}\frac{dT}{dt} \right] \\ & -\frac{GM}{c^2r^2}\frac{1}{1+\frac{2GM}{c^2r}}\frac{dq_\mu}{dt}\frac{dr}{dt} \end{align*} \]

を得る。

\[ \small x\frac{dx}{dt}+y\frac{dy}{dt}+z\frac{dz}{dt} = r\frac{dr}{dt} \]

であるから、第2項の座標に関する項と第3項は相殺することができて

\[ \small \frac{d^2q_\mu}{dt^2} = -\frac{GM}{r^3}q_\mu+\frac{GM}{c^2r^3}\frac{dq_\mu}{dt}\frac{1}{1+\frac{2GM}{c^2r}}\frac{r^2}{T}\frac{dT}{dt} \]

を得る。これが相対性理論における楕円運動の運動方程式ということになる。これは座標軸\(\small T\)についても同様に適用することができる。

 以上から、相対性理論における楕円運動は

\[ \small \begin{align*} &\frac{d^2x}{dt^2} = -\frac{GM}{r^3}\left(x-\frac{1}{c^2}\frac{1}{1+\frac{2GM}{c^2r}}\frac{dx}{dt}\frac{r^2}{T}\frac{dT}{dt}\right) \\ &\frac{d^2y}{dt^2} = -\frac{GM}{r^3}\left(y-\frac{1}{c^2}\frac{1}{1+\frac{2GM}{c^2r}}\frac{dy}{dt}\frac{r^2}{T}\frac{dT}{dt}\right) \\ &\frac{d^2z}{dt^2} = -\frac{GM}{r^3}\left(z-\frac{1}{c^2}\frac{1}{1+\frac{2GM}{c^2r}}\frac{dz}{dt}\frac{r^2}{T}\frac{dT}{dt}\right) \\ &\frac{d^2T}{dt^2} = -\frac{GM}{r^3}\left(\frac{r^2}{c^2T}-\frac{1}{c^2}\frac{1}{1+\frac{2GM}{c^2r}}\frac{r^2}{T}\left(\frac{dT}{dt}\right)^2\right) \end{align*} \]

という連立微分方程式に従うということになる。おそらくこの連立微分方程式は解析解では解けないと推測されるため、プログラムによる数値計算で解を求める必要があるだろう。連立微分方程式の数値解法についてはそのうち簡単に説明しよう。

 また、上記の解は\(\small T,t\)の絶対的な値を必要とするが、これは観測できない値であり本当の数値を知ることはできない。そのため、一般相対性理論同様に\(\small t=0\)と置いた近似を適用しよう。円錐座標系では

\[ \small \begin{align*} &r^2+c^2T^2 = c^2t^2 \\ &r\frac{dr}{dt}+c^2T\frac{dT}{dt} = c^2t \end{align*} \]

であったから、\(\small t=0\)とすれば

\[ \small \begin{align*} &r^2 = -c^2T^2 \\ &r\frac{dr}{dt} = -c^2T\frac{dT}{dt} \end{align*} \]

が成り立つ。上の式を下の式に代入すると

\[ \small \frac{dT}{dt} = \pm \frac{T}{r}\frac{dr}{dt} \]

を得ることができる。恣意的であるかもしれないが、マイナスの解を採用して、この式を運動方程式に代入して整理すると

\[ \small \begin{align*} &\frac{d^2x}{dt^2} = -\frac{GM}{r^3}\left(x+\frac{1}{c^2}\frac{1}{1+\frac{2GM}{c^2r}}\frac{dx}{dt}r\frac{dr}{dt}\right) \\ &\frac{d^2y}{dt^2} = -\frac{GM}{r^3}\left(y+\frac{1}{c^2}\frac{1}{1+\frac{2GM}{c^2r}}\frac{dy}{dt}r\frac{dr}{dt}\right) \\ &\frac{d^2z}{dt^2} = -\frac{GM}{r^3}\left(z+\frac{1}{c^2}\frac{1}{1+\frac{2GM}{c^2r}}\frac{dz}{dt}r\frac{dr}{dt}\right) \\ &\frac{d^2T}{dt^2} = -\frac{GM}{r^3}\left(\frac{r^2}{c^2T}+\frac{1}{c^2}\frac{1}{1+\frac{2GM}{c^2r}}T\left(\frac{dr}{dt}\right)^2\right) \end{align*} \]

を得る。\(\small x,y,z\)の運動方程式から\(\small T\)を消去できたので、\(\small T\)に関する方程式を省略することができる。\(\small r(dr/dt)\)の式を\(\small x,y,z\)の式に直すと

\[ \small \begin{align*} &\frac{d^2x}{dt^2} = -\frac{GM}{r^3}\left(x+\frac{1}{c^2}\frac{1}{1+\frac{2GM}{c^2r}}\frac{dx}{dt}\left(x\frac{dx}{dt}+y\frac{dy}{dt}+z\frac{dz}{dt} \right)\right) \\ &\frac{d^2y}{dt^2} = -\frac{GM}{r^3}\left(y+\frac{1}{c^2}\frac{1}{1+\frac{2GM}{c^2r}}\frac{dy}{dt}\left(x\frac{dx}{dt}+y\frac{dy}{dt}+z\frac{dz}{dt} \right)\right) \\ &\frac{d^2z}{dt^2} = -\frac{GM}{r^3}\left(z+\frac{1}{c^2}\frac{1}{1+\frac{2GM}{c^2r}}\frac{dz}{dt}\left(x\frac{dx}{dt}+y\frac{dy}{dt}+z\frac{dz}{dt} \right)\right) \ \end{align*} \]

と計算することができる。これが相対性理論における楕円運動の式ということになる。古典力学との差異は電磁気学における磁場と同じような項ということになるだろう。この方程式は\(\small t=0\)という前提の方程式であったから、実際に計算をする際は差分計算で時間を進めても、次のステップでは改めて\(\small t=0\)と時間を取り直す必要があることに注意する必要がある。これは通常の一般相対性理論と同様であろう。

 最後に、円錐座標系の運動方程式

\[ \small \left(\frac{dx}{dt}\right)^2+\left(\frac{dy}{dt}\right)^2+\left(\frac{dz}{dt}\right)^2+c^2\left(\frac{dT}{dt}\right)^2+x\frac{d^2x}{dt^2}+y\frac{d^2y}{dt^2}+z\frac{d^2z}{dt^2}+c^2T\frac{d^2T}{dt^2} = c^2 \]

にこの解を当てはめてみよう。代入して整理すると

\[ \small x\frac{d^2x}{dt^2}+y\frac{d^2y}{dt^2}+z\frac{d^2z}{dt^2}+c^2T\frac{d^2T}{dt^2}= -\frac{2GM}{r}-\frac{GM}{c^2r}\frac{1}{1+\frac{2GM}{c^2r}}\left(\left(\frac{dr}{dt}\right)^2+\frac{c^2T^2}{r^2}\left(\frac{dr}{dt}\right)^2\right) \]

を得る。\(\small t=0\)における円錐座標系では\(\small r^2 = -c^2T^2\)であったから第2項は0になる。したがって

\[ \small x\frac{d^2x}{dt^2}+y\frac{d^2y}{dt^2}+z\frac{d^2z}{dt^2}+c^2T\frac{d^2T}{dt^2}= -\frac{2GM}{r} \]

という形式で整合性がとれそうである。

シュワルツシルト解

 ここまで読んだ読者の中には、問題設定が一般相対性理論におけるシュワルツシルト解と同じであるのになぜ異なる解を導出しているのかと不満を抱いた人もいるかもしれない。これは、前節までの議論が古典力学に合わせて、質量が重い方の質点(恒星)の座標を原点に取っていることに原因がある。一般相対性理論では、質量が軽い方の質点(惑星)の座標を原点に取り、その質点が原点からどのように離れる運動をするかという形式で運動を記述する。そのため、ポテンシャル関数の符号が反対であり、

\[ \small V = \frac{2GmM}{r} \]

となる。したがって、通常の一般相対性理論ではエネルギーが

\[ \small E = \sqrt{\frac{m^2c^4+p^2c^2}{1-\frac{2GM}{c^2r}}} \]

であるとして運動方程式を求める必要がある。前節と同様の手続きで運動方程式を求めると

\[ \small \begin{align*} &\frac{d^2x}{dt^2} = \frac{GM}{r^3}\left(x+\frac{1}{c^2}\frac{1}{1-\frac{2GM}{c^2r}}\frac{dx}{dt}\left(x\frac{dx}{dt}+y\frac{dy}{dt}+z\frac{dz}{dt} \right)\right) \\ &\frac{d^2y}{dt^2} = \frac{GM}{r^3}\left(y+\frac{1}{c^2}\frac{1}{1-\frac{2GM}{c^2r}}\frac{dy}{dt}\left(x\frac{dx}{dt}+y\frac{dy}{dt}+z\frac{dz}{dt} \right)\right) \\ &\frac{d^2z}{dt^2} = \frac{GM}{r^3}\left(z+\frac{1}{c^2}\frac{1}{1-\frac{2GM}{c^2r}}\frac{dz}{dt}\left(x\frac{dx}{dt}+y\frac{dy}{dt}+z\frac{dz}{dt} \right)\right) \end{align*} \]

となる(エネルギーの式が変わる以外は符号が反転するだけである)。

 加えて、\(\small T\)軸に対するポテンシャルという概念を一般相対性理論では扱わないため、運動方程式における相対論的な補正項もポテンシャル関数に含めなければならない。そのため、ポテンシャル関数は

\[ \small \frac{c^2}{E}V = 2\left(x\frac{d^2x}{dt^2}+y\frac{d^2y}{dt^2}+z\frac{d^2z}{dt^2}\right)=\frac{2GM}{r}+\frac{2GM}{c^2r}\frac{1}{1-\frac{2GM}{c^2r}}\left(\frac{dr}{dt}\right)^2 \]

と計算しなければならない。これを円錐座標系の運動方程式

\[ \small \left(\frac{dx}{dt}\right)^2+\left(\frac{dy}{dt}\right)^2+\left(\frac{dz}{dt}\right)^2+c^2\left(\frac{dT}{dt}\right)^2+x\frac{d^2x}{dt^2}+y\frac{d^2y}{dt^2}+z\frac{d^2z}{dt^2}+c^2T\frac{d^2T}{dt^2} = c^2 \]

に当てはめてみよう。両辺に\(\small dt^2\)を掛けて

\[ \small dx^2+dy^2+dz^2+c^2dT^2+\left(x\frac{d^2x}{dt^2}+y\frac{d^2y}{dt^2}+z\frac{d^2z}{dt^2}+c^2T\frac{d^2T}{dt^2}\right)dt^2 = c^2dt^2 \]

と表す。加速度に相当する項を

\[ \small \frac{c^2}{E}V = x\frac{d^2x}{dt^2}+y\frac{d^2y}{dt^2}+z\frac{d^2z}{dt^2}+c^2T\frac{d^2T}{dt^2}=\frac{2GM}{r}+\frac{2GM}{c^2r}\frac{1}{1-\frac{2GM}{c^2r}}\left(\frac{dr}{dt}\right)^2 \]

と置き換えると

\[ \small dx^2+dy^2+dz^2+c^2dT^2+\frac{2GM}{r}dt^2+\frac{2GM}{c^2r}\frac{1}{1-\frac{2GM}{c^2r}}dr^2 = c^2dt^2 \]

を得る。

 また、極座標の計算から\(\small dx^2+dy^2+dz^2\)を極形式

\[ \small \begin{align*} &x = r \sin \theta \cos \varphi \\ &y = r \sin \theta \sin \varphi \\ &z = r \cos \theta \ \end{align*} \]

に変換すると

\[ \small dx^2+dy^2+dz^2 = dr^2+r^2d\theta^2+r^2\sin^2\theta d\varphi^2 \]

と表すことができる。代入すると

\[ \small dr^2+r^2d\theta^2+r^2\sin^2\theta d\varphi^2-c^2dt^2+\frac{2GM}{r}dt^2+\frac{2GM}{c^2r}\frac{1}{1-\frac{2GM}{c^2r}}dr^2 = -c^2dT^2 \]

を得る。式を整理すると

\[ \small 1+\frac{2GM}{c^2r}\frac{1}{1-\frac{2GM}{c^2r}} =\frac{1}{1-\frac{2GM}{c^2r}} \]

に注意すれば

\[ \small -c^2dT^2 =-c^2\left(1-\frac{2GM}{c^2r} \right) dt^2+\frac{1}{1-\frac{2GM}{c^2r}}dr^2+r^2d\theta^2+r^2\sin^2\theta d\varphi^2 \]

とまとめることができる。これはシュワルツシルト解といわれる解だった。このように考えれば、前節の運動方程式は形式こそ異なれ、シュワルツシルト解と等価な運動方程式であると理解することができるだろう。

まとめ

 まだ筆者の理解が揺らいでいる部分(係数(2倍するかどうか)や符号(\(\small \pm\))に自信が持てない)があるが、一応円錐座標系における非線形な運動方程式と一般相対性理論の運動方程式でつじつまを合わせることができたように思える。これを一般的な重力ポテンシャル(ニュートンの重力方程式やアインシュタイン方程式)や二体問題、三体問題など複数の物質の運動を同時に扱う問題に拡張していきたいが、先の長い話になりそうである・・・複数の質点を扱おうとすると時間の取り直し(リセット)はしたくないので、

\[ \small r_i^2+c^2T_i^2 = c^2t^2 \]

を満たすように各質点の\(\small T\)を計算しなければならないが、\(\small t=0\)からスタートするとこれは複素数にしなければならないということになる。例えば

\[ \small \begin{align*} &\frac{d}{dt}T^2 = 2T\frac{dT}{dt} \\ &\frac{d^2}{dt^2}T^2 = 2\left(\frac{dT}{dt}\right)^2+2T\frac{d^2T}{dt^2} \ \end{align*} \]

ではなく

\[ \small \begin{align*} &\frac{d}{dt}TT^\ast = T^\ast\frac{dT}{dt}+T\frac{dT^\ast}{dt} \\ &\frac{d^2}{dt^2}TT^\ast = 2\frac{dT^\ast}{dt}\frac{dT}{dt}+T^\ast\frac{d^2T}{dt^2}+T\frac{d^2T^\ast}{dt^2} \ \end{align*} \]

のように計算しなければならないのかもしれない。最終的には局所時間を複素数にした理論になりそうな気がするが、いまのところ想像がついていない。初期値を\(\small t=\max\{r_i/c\}\)にすればいいだけだろうという気もしなくもない・・・

 ちなみに、シュワルツシルト半径

\[ \small r_s = \frac{2GM}{c^2} \]

はブラックホールと言われ、通常の一般相対性理論ではこの半径の内部に入ると物質はそこから脱出することが不可能になるという解釈になる。しかし、第2節の解を用いると、重力による引力の項より相対論的な項(これは物質を回転運動による遠心力で遠ざける項と見ることができる)の影響が大きくなり、そもそもブラックホールの内部に侵入するということは不可能であるということになる。この意味で、相対性理論では重力は単純な引力(中心力)ではないということに注意が必要であろう。

 最後に、重力がある空間では光の速度はユークリッド空間の意味では一定ではないことに注意しておこう。

\[ \small \left(\frac{dx}{dt}\right)^2+\left(\frac{dy}{dt}\right)^2+\left(\frac{dz}{dt}\right)^2+c^2\left(\frac{dT}{dt}\right)^2+x\frac{d^2x}{dt^2}+y\frac{d^2y}{dt^2}+z\frac{d^2z}{dt^2}+c^2T\frac{d^2T}{dt^2} = c^2 \]

で、\(\small T=0\)である場合を考えればよいから

\[ \small \left(\frac{dx}{dt}\right)^2+\left(\frac{dy}{dt}\right)^2+\left(\frac{dz}{dt}\right)^2+x\frac{d^2x}{dt^2}+y\frac{d^2y}{dt^2}+z\frac{d^2z}{dt^2} = c^2 \]

が光の運動が満たさなければならない条件になる。ただし、これは必ずしも光の速度が一定ではないということを意味しないかもしれない。言い換えるならば、円錐座標系

\[ \small x^2+y^2+z^2+c^2T^2=c^2t^2 \]

上にとどまらなければならないという条件から出てきた式であり、光の座標は

\[ \small x^2+y^2+z^2=c^2t^2 \]

でなければならないと考えるならば、円錐座標系における速度と考えるとやはり光の速度は\(\small c\)で一定になるように局所的な時間\(\small T\)が定まっていると考えなければならないだろう。言い換えれば、特殊相対性理論における光速度不変の原理は”ユークリッド空間における光の速度は不変である。”ということであったが、一般相対性理論では”円錐座標系における光の速度は不変である。”と書き換えられることになるかもしれない。重力がない空間では両者がたまたま一致していただけということになるだろう。

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