二体問題

物理学

概要

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で、古典力学的な楕円運動が

\[ \small \begin{align*} &x(t) = r(t)\cos\omega(t) = \frac{a(1-\epsilon^2)}{1+\epsilon\cos \omega(t)}\cos\omega(t) \\ &y(t) = r(t)\sin\omega(t) = \frac{a(1-\epsilon^2)}{1+\epsilon\cos \omega(t)}\sin\omega(t) \\ &\frac{d\omega}{dt} = \frac{\sqrt{L^2}}{mr^2} \\ &a= -\frac{1}{2}\frac{GmM}{E} \\ &\epsilon = \sqrt{1+\frac{2EL^2}{G^2m^3M^2}} \\ \end{align*} \]

で表せることを示した。時間について微分すれば、速度と加速度は

\[ \small \begin{align*} &\frac{dx}{dt}=-r^2(t)\frac{d\omega}{dt}\frac{\sin\omega(t)}{a(1-\epsilon^2)}= -\sqrt{\frac{GM}{a(1-\epsilon^2)}} \sin \omega(t) \\ &\frac{dy}{dt}=r^2(t)\frac{d\omega}{dt}\frac{\epsilon+\cos\omega(t)}{a(1-\epsilon^2)} = \sqrt{\frac{GM}{a(1-\epsilon^2)}} (\epsilon+\cos \omega(t)) \\ &\frac{d^2x}{dt^2} =-\sqrt{\frac{GM}{a(1-\epsilon^2)}} \cos \omega(t)\frac{d\omega}{dt}=-\frac{GM}{r^2}\cos\omega(t) \\ &\frac{d^2y}{dt^2} =-\sqrt{\frac{GM}{a(1-\epsilon^2)}} \sin \omega(t)\frac{d\omega}{dt}=-\frac{GM}{r^2}\sin\omega(t) \end{align*} \]

と求めることができる。いずれはこれを相対性理論の枠組みに拡張したいのであるが、これらの計算は質量が大きい質点の座標を原点に固定しており、二つの質点が対称に扱われていないという問題がある。相対性理論は運動を相対的に扱う必要があるため、このままの式では都合が悪いような気がしている。本稿の目的は、上記の運動方程式を相対化して、二つの質点がそれぞれ個別に運動しているものとして方程式を直した場合にどのように定式化されるか示すことである。

二体問題

 二つの質点の座標を\(\small x_1,y_1,x_2,y_2\)(\(\small z\)軸は0とする)、質量を\(\small m_1,m_2\)と置いて、これらのパラメータを入れ替えても同じ運動を表現する運動方程式を導出したい、というのが本稿の問題である。こういった問題は一般に二体問題(Two-body Problem)といわれる。これを三体以上に拡張した問題が有名な三体問題(Three-body Problem)である。二体問題の解の形式はいくつかあるかもしれないが、ありがちな解は2つの質点の重心を原点にする方法である。具体的には

\[ \small \begin{align*} &m_1x_1(t)+m_2x_2(t) = 0 \\ &m_1y_1(t)+m_2y_2(t) = 0 \end{align*} \]

を満たすように二つの質点の座標を定める方法であり、重心座標系(Barycentric System)といわれる。運動方程式の解自体は古典力学的な楕円運動と同じであり、これと整合的になるように二つの質点の運動方程式を定める必要がある。

 古典力学的な楕円運動を\(\small x(t),y(t)\)とすれば

\[ \small \begin{align*} &x(t) = x_1(t)-x_2(t) \\ &y(t) = y_1(t)-y_2(t) \end{align*} \]

であるから、重心座標系の条件を満たすように式を求めると、

\[ \small \begin{align*} &x_1(t) = \frac{m_2}{m_1+m_2}x(t), \quad x_2(t) = -\frac{m_1}{m_1+m_2}x(t) \\ &y_1(t) = \frac{m_2}{m_1+m_2}y(t), \quad y_2(t) = -\frac{m_1}{m_1+m_2}y(t) \end{align*} \]

と定めれば良い。速度や加速度はこれを微分した値であるが、\(\small x(t),y(t)\)にかかっている係数は定数であるため容易に計算できるだろう。

 あとはこれらの運動を定めるパラメータ\(\small a,\epsilon\)をどのように定めれば良いかを考えよう。長半径\(\small a\)は長さであるから、座標同様に重心座標系の重みを掛けて定めることができる。すなわち

\[ \small a_1 =\frac{m_2}{m_1+m_2}a, \quad a_2 =\frac{m_1}{m_1+m_2}a, \quad a =a_1+a_2 \]

である。具体的に書けば

\[ \small \begin{align*} &a_1 = -\frac{m_2}{m_1+m_2}\frac{1}{2}\frac{Gm_1m_2}{E} \\ &a_2 = -\frac{m_1}{m_1+m_2}\frac{1}{2}\frac{Gm_1m_2}{E} \\ &E = -\frac{1}{2}\frac{Gm_1m_2}{a_1+a_2} \end{align*} \]

となる。

 次に、離心率\(\small \epsilon\)や周期\(\small T\)、真近点角\(\small \omega(t)\)は二つの質点の運動で共通でなければならないことに注意する。片方の質点の座標を固定した場合の軌道角運動量は

\[ \small L^2 = Gm^2Ma(1-\epsilon^2) \]

であったが、質点1と2でそれぞれ

\[ \small \begin{align*} &L_1^2 = Gm_1^2m_2a_1(1-\epsilon^2) \\
&L_2^2 = Gm_1m_2^2a_2(1-\epsilon^2) \end{align*} \]

であり、\(\small L^2 = L_1^2+L_2^2\)であると考えよう。計算すると

\[ \small \begin{align*} L^2 &= Gm_1m_2(1-\epsilon^2)(m_1a_1+m_2a_2) \\ &= -\frac{1}{2E}\frac{G^2m_1^3m_2^3}{(m_1+m_2)}(1-\epsilon^2) = \frac{Gm_1^2m_2^2}{m_1+m_2}a(1-\epsilon^2) \end{align*} \]

を得る。\(\small \epsilon\)を逆算すれば

\[ \small \epsilon =\sqrt{1+\frac{2EL^2(m_1+m_2)}{G^2m_1^3m_2^3}}=\sqrt{1-\frac{L^2}{Gm_1^2m_2^2}\frac{m_1+m_2}{a_1+a_2}} \]

を得ることができる。

 面積速度一定の法則から

\[ \small \begin{align*} &r_1^2\frac{d\omega}{dt} = r^2\frac{d\omega}{dt}\left(\frac{m_2}{m_1+m_2}\right)^2 = \left(\frac{m_2}{m_1+m_2}\right)^2\frac{L}{m} = \frac{L_1}{m_1} \\ &r_2^2\frac{d\omega}{dt} = r^2\frac{d\omega}{dt}\left(\frac{m_1}{m_1+m_2}\right)^2 = \left(\frac{m_1}{m_1+m_2}\right)^2\frac{L}{m} = \frac{L_2}{m_2} \end{align*} \]

が成り立つ。\(\small m\)は古典力学的な楕円運動では質量が小さい質点の質量であったが、これは対称的な式ではないため、重心座標系において\(\small m\)が何に対応する式であるか推測しよう。二つの質点の全角運動量が

\[ \small m_1L_1+m_2L_2 =\left(\frac{m_1m_2}{m_1+m_2}\right)^2\frac{L}{m}=mL \]

であると考えれば、

\[ \small \frac{1}{m}= \frac{m_1+m_2}{m_1m_2} = \frac{1}{m_1}+\frac{1}{m_2} \]

が成り立つ。代入すれば

\[ \small \begin{align*} &r_1^2\frac{d\omega}{dt} = \frac{1}{m_1+m_2}\frac{m_2}{m_1}L \\ &r_2^2\frac{d\omega}{dt} = \frac{1}{m_1+m_2}\frac{m_1}{m_2}L \end{align*} \]

を得る。ケプラーの第三法則から周期を計算すれば

\[ \small \begin{align*} &S_1 = \pi a_1 b_1 = \pi a_1^2 \sqrt{1-\epsilon^2} \\ &S_2 = \pi a_2 b_2 = \pi a_2^2 \sqrt{1-\epsilon^2} \\ &\frac{dS_1}{dt} = \frac{1}{2}r_1^2\dot{\omega} = \frac{1}{2}\frac{1}{m_1+m_2}\frac{m_2}{m_1}L \\ &\frac{dS_2}{dt} = \frac{1}{2}r_2^2\dot{\omega} = \frac{1}{2}\frac{1}{m_1+m_2}\frac{m_1}{m_2}L \end{align*} \]

であるから、周期は

\[ \small \begin{align*} T&=\frac{S_1}{dS_1/dt}=\frac{S_2}{dS_2/dt} \\ &=\frac{m_1(m_1+m_2)}{m_2}\frac{2\pi a_1^2\sqrt{1-\epsilon^2}}{L}= \frac{m_2(m_1+m_2)}{m_1}\frac{2\pi a_2^2\sqrt{1-\epsilon^2}}{L} \\ &=\frac{m_1m_2}{m_1+m_2}\frac{2\pi a^2\sqrt{1-\epsilon^2}}{L} \end{align*} \]

となる。

\[ \small L^2 = \frac{Gm_1^2m_2^2}{m_1+m_2}a(1-\epsilon^2) \]

であったから、

\[ \small T= \frac{2\pi}{\sqrt{G(m_1+m_2)}}(a_1+a_2)^{3/2} \]

が成り立つ。以上で、一通りの式を二つの質点について対称な式に書き換えることができた。添え字の1と2を入れ替えても計算式が変わらないことは確認できるだろう。

まとめ

 最後に、座標の運動方程式をまとめておこう。

\[ \small \begin{align*} &x_1(t)=\frac{m_2}{m_1+m_2}x(t) = r_1(t)\cos\omega(t) = \frac{a_1(1-\epsilon^2)}{1+\epsilon\cos \omega(t)}\cos\omega(t) \\ &x_2(t)=-\frac{m_1}{m_1+m_2}x(t) = -r_2(t)\cos\omega(t) = -\frac{a_2(1-\epsilon^2)}{1+\epsilon\cos \omega(t)}\cos\omega(t) \\ &y_1(t) = \frac{m_2}{m_1+m_2}y(t) = r_1(t)\sin\omega(t) = \frac{a_1(1-\epsilon^2)}{1+\epsilon\cos \omega(t)}\sin\omega(t) \\ &y_2(t)=-\frac{m_1}{m_1+m_2}y(t) = -r_2(t)\cos\omega(t) = -\frac{a_2(1-\epsilon^2)}{1+\epsilon\cos \omega(t)}\sin\omega(t) \end{align*} \]

である。\(\small a_1,a_2,\epsilon\)は\(\small E,L^2\)が外生的に与えられる場合、

\[ \small \begin{align*} &a=a_1+a_2 = -\frac{1}{2}\frac{Gm_1m_2}{E}, \quad a_1 =\frac{m_2}{m_1+m_2}a, \quad a_2 =\frac{m_1}{m_1+m_2}a \\ &\epsilon =\sqrt{1+\frac{2EL^2(m_1+m_2)}{G^2m_1^3m_2^3}}=\sqrt{1-\frac{L^2}{Gm_1^2m_2^2}\frac{m_1+m_2}{a_1+a_2}} \end{align*} \]

でそれぞれ計算できる。角速度の式は

\[ \small r^2\frac{d\omega}{dt} = \sqrt{L^2}\left(\frac{1}{m_1}+\frac{1}{m_2}\right)=\sqrt{G(m_1+m_2)(a_1+a_2)(1-\epsilon^2)} \]

となる。

 速度を計算すると

\[ \small \begin{align*} &\frac{dx_1(t)}{dt} =-r_1^2(t)\frac{d\omega}{dt}\frac{\sin\omega(t)}{a_1(1-\epsilon^2)}= -\frac{m_2}{m_1+m_2}\sqrt{\frac{G(m_1+m_2)}{a(1-\epsilon^2)}} \sin \omega(t) \\ &\frac{dx_2(t)}{dt} =r_2^2(t)\frac{d\omega}{dt}\frac{\sin\omega(t)}{a_2(1-\epsilon^2)}= \frac{m_1}{m_1+m_2}\sqrt{\frac{G(m_1+m_2)}{a(1-\epsilon^2)}} \sin \omega(t) \\ &\frac{dy_1(t)}{dt} =r_1^2(t)\frac{d\omega}{dt}\frac{\epsilon+\cos\omega(t)}{a_1(1-\epsilon^2)}= \frac{m_2}{m_1+m_2}\sqrt{\frac{G(m_1+m_2)}{a(1-\epsilon^2)}} (\epsilon+ \cos \omega(t)) \\ &\frac{dy_2(t)}{dt} =-r_2^2(t)\frac{d\omega}{dt}\frac{\epsilon+\cos\omega(t)}{a_2(1-\epsilon^2)}=-\frac{m_1}{m_1+m_2}\sqrt{\frac{G(m_1+m_2)}{a(1-\epsilon^2)}} (\epsilon+ \cos \omega(t)) \end{align*} \]

を得る。差を計算すると

\[ \small \begin{align*} &\frac{dx(t)}{dt} = \frac{dx_1(t)}{dt}-\frac{dx_2(t)}{dt} =-\sqrt{\frac{G(m_1+m_2)}{a(1-\epsilon^2)}} \sin \omega(t) \\ &\frac{dy(t)}{dt} = \frac{dy_1(t)}{dt}-\frac{dy_2(t)}{dt} =\sqrt{\frac{G(m_1+m_2)}{a(1-\epsilon^2)}} (\epsilon+ \cos \omega(t)) \end{align*} \]

である。

 もう一回微分して、加速度を計算すると

\[ \small \begin{align*} &\frac{d^2x_1(t)}{dt^2} = -\frac{m_2}{m_1+m_2}\sqrt{\frac{G(m_1+m_2)}{a(1-\epsilon^2)}} \cos \omega(t) \frac{d\omega}{dt} =-\frac{m_2}{m_1+m_2}\frac{G(m_1+m_2)}{r^2}\cos \omega(t) \\ &\frac{d^2x_2(t)}{dt^2} = \frac{m_1}{m_1+m_2}\sqrt{\frac{G(m_1+m_2)}{a(1-\epsilon^2)}} \cos \omega(t) \frac{d\omega}{dt} =\frac{m_1}{m_1+m_2}\frac{G(m_1+m_2)}{r^2}\cos \omega(t) \\ &\frac{d^2y_1(t)}{dt^2} = -\frac{m_2}{m_1+m_2}\sqrt{\frac{G(m_1+m_2)}{a(1-\epsilon^2)}} \sin \omega(t)\frac{d\omega}{dt} = -\frac{m_2}{m_1+m_2}\frac{G(m_1+m_2)}{r^2}\sin \omega(t) \\ &\frac{d^2y_2(t)}{dt^2}=\frac{m_1}{m_1+m_2}\sqrt{\frac{G(m_1+m_2)}{a(1-\epsilon^2)}} \sin \omega(t) \frac{d\omega}{dt} = \frac{m_1}{m_1+m_2}\frac{G(m_1+m_2)}{r^2}\sin \omega(t) \end{align*} \]

となる。速度同様に差を計算すると

\[ \small \begin{align*} &\frac{d^2x(t)}{dt^2} = \frac{d^2x_1(t)}{dt^2}-\frac{d^2x_2(t)}{dt^2} =-\frac{G(m_1+m_2)}{r^2}\cos \omega(t) = -\frac{G(m_1+m_2)}{r^2}\frac{x}{r} \\ &\frac{d^2y(t)}{dt^2} = \frac{d^2y_1(t)}{dt^2}-\frac{d^2y_2(t)}{dt^2} =-\frac{G(m_1+m_2)}{r^2}\sin \omega(t) = -\frac{G(m_1+m_2)}{r^2}\frac{y}{r} \ \end{align*} \]

である。変な式を計算するなよと思うかもしれないが

\[ \small \begin{align*} &m_1\frac{d^2x_1(t)}{dt^2} = -\frac{Gm_1m_2}{r^3}(x_1(t)-x_2(t)) \\ &m_2\frac{d^2x_2(t)}{dt^2} = -\frac{Gm_1m_2}{r^3}(x_2(t)-x_1(t)) \\ &m_1\frac{d^2y_1(t)}{dt^2} = -\frac{Gm_1m_2}{r^3}(y_1(t)-y_2(t)) \\ &m_2\frac{d^2y_2(t)}{dt^2} = -\frac{Gm_1m_2}{r^3}(y_2(t)-y_1(t)) \end{align*} \]

から計算すれば、確かに成り立つ式であることが分かるだろう。

おまけ:重心座標系における三体問題

 三体問題は古典力学的なエネルギーの式から計算できる9本の加速度の式

\[ \small \begin{align*} &m_1\frac{d^2q_1(t)}{dt^2} = -\frac{Gm_1m_2}{r_{12}^3}(q_1(t)-q_2(t))-\frac{Gm_1m_3}{r_{13}^3}(q_1(t)-q_3(t)) \\ &m_2\frac{d^2q_2(t)}{dt^2} = -\frac{Gm_1m_2}{r_{12}^3}(q_2(t)-q_1(t))-\frac{Gm_2m_3}{r_{23}^3}(q_2(t)-q_3(t)) \\ &m_3\frac{d^2q_3(t)}{dt^2} = -\frac{Gm_1m_3}{r_{13}^3}(q_3(t)-q_1(t))-\frac{Gm_2m_3}{r_{23}^3}(q_3(t)-q_2(t)), \; q=x,y,z \\ &r_{ij} = \sqrt{(x_i-x_j)^2+(y_i-y_j)^2+(z_i-z_j)^2} \end{align*} \]

が与えられたときにおける座標と速度の運動方程式(合計で18個)を求める問題である。2階の微分の式であるから、解を特定するためには18個の積分定数が必要になる。しかし、自然な条件として与えられる積分定数は10個である(エネルギー\(\small E\)と角運動量\(\small l_x,l_y,l_z\)で4個、座標の中心をどのように定めるかで6個)と言われており、8個分未知数が余分にあるために一般解を定めることができない問題である。数世紀にわたって未解決な数理問題として知られる。もちろん、座標や速度について(何らかの近似などを用いて)追加的な条件を8個指定してしまえば特殊解を求めることができるが、おそらく特殊すぎて汎用性のある解とみなすことができないのだろう。

 座標の中心をどのように定めるかで6個の積分定数を減らすことができると書いたが、座標系を重心座標系で書いた場合にどのように表現できるかというのがこのおまけの内容である。もちろん、一つの質点が原点で動かないという仮定を置けば6個のパラメータを減らすことができるが、これと同じことを重心座標系を用いて定義しよう。3つの質点の重心が原点であるのだから

\[ \small \begin{align*} &m_1x_1(t)+m_2x_2(t)+m_3x_3(t) = 0 \\ &m_1y_1(t)+m_2y_2(t)+m_3y_3(t) = 0 \\ &m_1z_1(t)+m_2z_2(t)+m_3z_3(t) = 0 \\ \end{align*} \]

を満たす必要がある。二つの質点の場合同様に、質点1と質点2の座標の差、質点1と質点3の座標の差

\[ \small \begin{align*} &x_{12}(t) = x_1(t)-x_2(t) \\ &x_{13}(t) = x_1(t)-x_3(t) \end{align*} \]

から、それぞれの質点の座標を定めることを考えよう。うまく係数を定めると

\[ \small \begin{align*} &x_1(t) = \frac{m_2x_{12}+m_3x_{13}}{m_1+m_2+m_3} \\ &x_2(t) = \frac{-m_1x_{12}+m_3x_{23}}{m_1+m_2+m_3} \\ &x_3(t) = \frac{-m_1x_{13}-m_2x_{23}}{m_1+m_2+m_3} \end{align*} \]

と置けば、重心が原点になることが確認できる。質点2と質点3の座標の差\(\small x_{23}\)は

\[ \small x_{23}(t) = x_2(t)-x_3(t) = x_{13}(t)-x_{12}(t) \]

である。計算すると

\[ \small \begin{align*} &x_1(t) = \frac{m_2x_{12}+m_3x_{13}}{m_1+m_2+m_3} \\ &x_2(t) = \frac{-(m_1+m_3)x_{12}+m_3x_{13}}{m_1+m_2+m_3} \\ &x_3(t) = \frac{-(m_1+m_2)x_{13}+m_2x_{12}}{m_1+m_2+m_3} \end{align*} \]

と置けば、各質点の座標を\(\small x_{12},x_{13}\)の関数として定義することができる。3本あった加速度の式は

\[ \small \begin{align*} &\frac{d^2x_{12}(t)}{dt^2} = -\frac{G(m_1+m_2)}{r_{12}^3}x_{12}-\frac{Gm_3}{r_{13}^3}x_{13}-\frac{Gm_3}{r_{23}^3}(x_{13}-x_{12}) \\ &\frac{d^2x_{13}(t)}{dt^2} = -\frac{G(m_1+m_3)}{r_{13}^3}x_{13}-\frac{Gm_2}{r_{12}^3}x_{12}+\frac{Gm_2}{r_{23}^3}(x_{13}-x_{12}) \end{align*} \]

という2本の式にまとめることができる。以上により、6個の未知数を減らすことができるだろう。

 三体問題は解が分からないというより、そもそも解けないことが証明されてしまっている問題であるため、3つの天体がどのように運動するか全く想像がつかないと思うかもしれない。しかし、特殊な解であればどのようなものであるか全く想像できないかというと、そんなこともない。現実的に想像できる惑星の運動では太陽と地球と月の関係を考えれば、これは立派な三体問題の解であろう。ただし、これは太陽の質量が非常に大きく、月と地球の距離が太陽との距離と比較して非常に小さいためである。大きな関心は\(\small m_1\approx m_2\approx m_3\)で\(\small r_{12}\approx r_{13} \approx r_{23}\)のような場合にどのような運動をするかだろう。

 そもそも重要な問題点として古典力学は時間や空間という概念を実をいうと間違って理解している。本来的な解決は相対性理論の問題として定式化しなければならない、ということだろう。相対性理論では空間は3次元球面と推測されるため、3次元球面上で働く何らかの力(もしくは何の力も働いていないこと)をユークリッド空間上の万有引力と勘違いしてしまっていることに問題があるのかもしれない。言い換えれば、三体問題は問題自体が間違っているため、そもそも正しい問題設定が何であるかから考え直さなければならないというのが難しいところなのだろう。これを行うためには、重力というものの本質が何であるかを知らなければならないが、これは物理学においても非常に大きな難題になっているというのが現状であろう。

 怪しそうなのは重力の影響が座標軸ごとに独立であるという仮定であり、これが間違いであれば自由度が失われて、解を求められるようになるかもしれない。本来存在しないはずの自由度を設けてしまっているために解を求められないというのが三体問題の問題である、というのが一つの仮説になるだろう。もう一つの仮説は、量子力学同様に、惑星のような大きな物質の運動も実は確定したものではなく、確率的にしか定められない可能性があるということだろう。\(\small m_1\approx m_2\approx m_3\)のような場合は、軌道を確定的に定めることができず、実現可能な無限個の軌道の中からランダムにサンプリングされた軌道が観測されるにすぎない可能性があるということになる。この場合、三体問題の解は確定的な運動方程式ではなく、シュレディンガー方程式のように確率分布を求める問題として定式化しなければならないということになる。いずれにしても、現在の筆者には想像もつかないところにある問題であるというのが正直な感想である・・・

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