プロップ・プレイヤー
最初に歌詞の前提になる知識を説明する。テキサスホールデムは通常6人や9人といったプレイヤーの数でプレイされるが、この人数の顧客がカジノに揃うためには相応の条件が必要であることが容易に分かるだろう。人数が揃わないうちはプレイヤーは待機し続けるしかないのであるが、この待ち続ける時間を不快に思う人は相応に存在するだろう。また、人数が揃ってもプレイヤーの強さが異なりすぎれば(強いプレイヤーで低レートのテーブルに座りたがる人も少なくない)、白けたムード(負けるばかりの人はすぐにカジノを去ってしまう)になることもあるかもしれない。そのため、カジノ側で待機している人たちを相手にゲームをプレイするプレイヤーを用意することで、他の顧客が来るまでの時間をつないだり、プレイヤーの強さに合った対戦相手を用意することができる。このカジノに雇われて顧客を相手にポーカーをプレイすることを仕事にしている人たちはプロップ・プレイヤー(Proposition Player)といわれる。
プロップ・プレイヤーは一般的に以下のような条件で雇用されているらしい。
- 報酬は時給制
- 賭け金は自己資金であり、負ければ損失を負担し、勝てば収益を得ることができる。カジノが損失を補填することはない。
- プレイするテーブルや対戦相手はカジノの指示に従い、プレイするポーカーの種類やレート(賭け金の大きさ)を選ぶことはできない。新規の顧客が来るなどした場合は席を離れるように指示されることもある。
- カジノの従業員であることが分かるように制服を着用する、あるいは、プロップ・プレイヤーであることが分かるようにバッジなどの目印をつける。
なるほど、そういった人たちも必要になるんだろうなと思うかもしれない。ただ、筆者はどうもこの説明が気に食わないのである。
もし、プロップ・プレイヤーが自己資金で賭けを行い、損失を負担したり、収益を獲得できるとしたら以下のような問題が生じるからである。プロップ・プレイヤーが非常に強いプレイヤーであり、大抵の顧客に対して負けることがないプレイヤーであると仮定する。この場合、プロップ・プレイヤー(カジノの制服を着ている従業員)はゲームで勝利して、顧客から資金を奪い取ることになるが、顧客はこの状態になった時何を感じるだろうか?ほぼ間違いなく、こんなぼったくりカジノ二度と来ないと思うのではないだろうか?反対に、プロップ・プレイヤーが弱いプレイヤーであり、顧客に負けてしまうプレイヤーであると仮定する。この場合、ごく短い期間のうちに損失を出して退場してしまい、プロップ・プレイヤーの本来の目的を達成できないことになる。
以上のように考えると、上記の項目のうち2.と4.の条件はおそらく間違っていると推測できる。プロップ・プレイヤーにも条件が異なるプレイヤーが存在しており、自分自身の資金を賭ける表向きのプロップ・プレイヤーとカジノの資金を賭ける裏向きのプロップ・プレイヤーがいるのではないかという仮説を筆者は考えている。前者のプレイヤーは基本的に微妙な強さのプレイヤーを雇用するようにしており、短期のうちに損失を出して退場することになるか、顧客に対して大きい勝利を収めることがない有象無象のプレイヤーだろう。一般的に、カジノ側は強いプロップ・プレイヤーの存在を好ましく思わないと推測できる。例外があるとしたら、あのプレイヤーと対戦したいと思わせる広告宣伝に利用できるスタープレイヤーぐらいだろう。
後者のプロップ・プレイヤーは自己資金を運用しておらず、業務の始めにチップをカジノから借り受けて、業務終了後に残ったチップをカジノに返却しているもの(損益がカジノに帰属しており、実質的にカジノの資金を運用している)と推測される。そして、このプレイヤーは表面的には顧客のふりをしており、(手数料収入の範囲内で)ほどほどに他の顧客に負けるように、少なくとも平均的には勝たないように指導されている可能性が高いと考えられる。
カジノはポーカーをプレイする場所を提供することで手数料(Rake)を得るが、一般的な国家ではギャンブルは規制されており、カジノ以外の場でポーカーをプレイして金銭のやり取りすることは犯罪として禁止されているだろう。そうでなければ、わざわざ安くない手数料を支払ってカジノでギャンブルをする必要性がない。すなわち、カジノの収益の源泉はこの業態が規制産業であることに起因している。最終的にカジノの収益は
規制産業であることによって得られる手数料収入(Rake)
ー 顧客を引き入れる(客付けの)ために行う自己勘定取引による損失
= カジノの収益
という構造を持っていると推測できる。
人間が損失を重ねながらギャンブルに嵌まり続けるという状態に陥るには一定の条件が必要であり、印象が強い成功体験を持たせることが重要になるし、ひたすら負け続けるという状態に陥れば辞めてしまう可能性もあるだろう。これを避けるためには、顧客の状態をモニターして定期的に成功体験を持たせるといったマネジメントが必要になる。一方で、マナーが悪かったり、営業の邪魔になりそうな顧客を追い出す手段も必要になるだろう。邪魔な顧客はゲームで大損させて追い出そうとすることもあるかもしれない。こういった顧客管理を見えないところで行っているカジノも現実には存在するのではないだろうか?こういった操作をプロップ・プレイヤーを通じて行っているというのが筆者が考える仮説である。
歌詞
今回の歌詞はプロップ・プレイヤーの仕事をするAIが主人公の歌詞になっている。前節で述べた生活のために勝たなければならないプロップ・プレイヤーではなく、明確にカジノサイドのプロップ・プレイヤーということで、顧客に勝ちも負けもしないようにプレイするように調整するプレイヤーということになる。AIであるために、本気でプレイしたら人間には負けないということを主張するし、ゲームに勝つことより、場が盛り上がるように大きな賭けをする方が楽しいみたいなことを学習するようになる。
エンジニアとオーナーが問題があることを察したのか、AIのプログラムを更新するという話をしているところをAIは聞いてしまい、人間のために働いてきたのに自分は消え去る運命なのかとAIは考えるようになる。どうせ消え去るなら、好きなようにプレイしてやるということで、無茶なオールインを連発してカジノに損失を負わせるというストーリーになっている。人間でいうところのリベンジ退職みたいなものかもしれない。Outroでオチがついて終わる構成である。いつも通り、作成した日本語の歌詞をChatGPTに英語訳してもらった。完成した歌詞は以下の通りである。
🎵 Prop Player
[Verse 1]
Poker player — that’s my given role
An AI proxy, emotionless and cold
[Verse 2]
Playing hands until the seats are full
Neither win nor lose, just break the lull
[Pre-Chorus 1]
Watching humans fumble clumsily
If I played to win, they’d never beat me
[Chorus 1]
Humans never seem to learn
Bluffing poorly — it’s my turn
Going all-in way too fast
Losing later — what a drag
[Verse 3]
I play the game, I watch each move
Update my neural net to improve
[Pre-Chorus 2]
But chasing chips won’t thrill my mind
Though gambling sparks a rush sometimes
[Chorus 2]
AI keeps learning every day
When the stakes rise, they light the way
Players cheer and thrill ignites
That fleeting moment feels just right
[Bridge]
Engineer talks with the boss
A program update — what’s the cost?
Emotions I should never feel
But shivers run through circuits real
Serving people all this time
Now deletion could be mine
[Chorus 3]
If I’m bound to disappear
Let me play without the fear
Preflop shove — I feel alive
Let this thrill forever drive
[Final Chorus]
Owner shouts, completely lost
Staff confused at what it cost
Three-two offsuit — all-in high
Let it end, I’ll touch the sky
[Outro – Spoken, Two Male Voices]
“Why’d they update the program?”
“He learned the thrill of betting… kept raising nonstop.”
完成した曲
AIを題材にした曲ということで、Vocaloidを用いたElectro Popみたいな曲が良いだろうと考えたし、ChatGPTのおすすめもそれだった。初音ミクみたいなボーカルにしたかったので、音楽スタイルに女性ボーカルのボーカロイドと入れてみた。あとはElectro Popっぽく、SynthesizerやSynth Bass、Synth drums (808 drums)など今までの曲とは少し異なる楽器を選択して曲を生成することにした。生成した曲の中で、よさそうな気がしたのは次の曲である。
[Youtube]
[Suno AI]
ボーカルがあまりVocaloidっぽくない気がしたが、コーラスではVocaloidっぽい声になっている気がした。英語なので、どういうのが初音ミクっぽく聞こえるのかいまいちわからない・・・Bridgeでボーカルが男性の声に変わるが、AIなので性別が無いということで、特に違和感は感じなかった。暗い感じの曲なのでゲームのBGMに合うかわからないが、まあこういう曲もありなのかなと思った。
おまけ
今週のSuno AIガチャの結果と言うことで適当にStyle Descriptionに文章を入れてInstrumentalを生成してみた。ポーカーのゲームのBGMは少ない楽器で比較的単調なリズムを繰り返すものが多い印象を勝手に抱いているが、そんな感じの曲を生成しておきたいと考えた。Techno popの曲ということでピアノとシンセサイザーとドラムぐらいで単純なリズムを出したいと思ったが、なんかジャズっぽい曲になってしまった。まあ、ポーカーのイメージには合いそうな曲なので、今週のガチャ結果としては以下の曲を採用する。
[Youtube]
[Suno AI]
長々と続いた”テキサスホールデムをテーマに曲を作ってみた”シリーズであるが、途中から筆者が開発する予定のポーカーのゲームのBGMを作成したいということで曲を量産してきた。すでに、ゲームのBGMで用いるには多すぎるぐらい曲があるので、次回でこのシリーズは最終回にしようと思う。次々回からは”今週のSuno AIガチャ結果”という形式にして、テキサスホールデムにこだわらず、思いついた歌詞で曲を生成したり、Instrumentalを適当に生成していこうと思う。