テキサスホールデムにおけるポストフロップ戦略

確率論

※ChatGPT画伯作、”A tense poker game scene in a dimly lit casino where a player is struggling to decide whether to call or fold after facing a huge bet in Texas Hold’em.”

ターンにおけるベット戦略

 前回の投稿に引き続いて、ポストフロップ(ターン、リバー)のベット戦略を考えよう。ターンでは共通カードが1枚追加されるため、フロップと比較してより強い役が出来やすくなっているため、この時点でできている役の評価はフロップと比較してインフレさせる必要があるだろう。この時点で完成している役ごとに注意点を記述していこう。

1. スリーカード以上の役が出来ている

対戦相手の手札にもよるが、勝者があなたである可能性が高いため、強気にベットして良いだろう。ただし、共通カードでスリーカードができている場合などは特に強くないので、フルハウスになる可能性があるかなどを考慮して判断する必要がある。フラッシュやストレートの場合の注意点はフロップと同様である。

2. ツーペア

手札から1枚共通カードから1枚のペアが2組出来ている場合は勝者があなたである可能性が高いため、強気にベットして良いだろう。共通カードでワンペアができていて、もう一つの組が手札から1枚共通カードから1枚のペアである場合は実質的にワンペア(すべてのプレイヤーにワンペアが配られている)であり、ランクの強さに応じてワンペアとして評価すればよいと思われる。ポケットペア+共通カード2枚の場合はポケットペアのランクの高さで勝利確率がだいぶ変わるため、ランクが低い場合は注意した方が良いだろう。共通カードでワンペアができているとスリーカードのプレイヤーがいる可能性が高くなるため、その分は割り引いて考えた方が良いかもしれない。

3. ワンペア(トップ)

フロップ時点と比較すると勝利確率は落ちるが、それでも共通カードのトップペアを持っている場合はあなたが勝者である可能性が高いので、強気にベットして良いだろう。ターンで公開されたカードが一番ランクが高い場合は、逆転している(されている)可能性が相応にあるので注意が必要だろう。例えば、QToでフロップがQ,8,3である場合トップペアであったが、ターンでAが出てきた場合はトップペアではなくなるので、Aを持っているプレイヤーに逆転されている可能性があるということになる。

4. ワンペア(その他)

ワンペアの場合の注意点はフロップの場合と同様である。残っている人数が多い場合はミドルペア以下のワンペアではそれほど勝率は高くないが、ヘッズアップ(残りが2人)の場合は相手の出方次第では強気に出てもよいかもしれない。

5. ハイカード

残っている人数が多い場合は基本的には撤退で良いだろう。ヘッズアップの場合は相手の出方次第であることは弱いワンペアの場合と同様である。

ストレートドロー(成立確率はオープンエンドで15%)やフラッシュドロー(成立確率は25%以下)はリバーで成立する可能性は高くないので、ベット額が低い場合やチェックで回ってきた場合以外はあきらめてもよいだろう。

リバーにおけるベット戦略

 リバーでは、それ以降カードが追加されることはないため、役が確定した状態でベッティング・アクションを決定することになる。5枚の共通カードを除いた47枚から2枚を引いた\(\small {}_{47}C_2=1081\)通りの手札を考えることができ、コンピュータを使えば自分が持っている手札が考えうる範囲で何番目に強い手札であるかを求めることができる。この順位が高いほどバリューが高い手札ということであり、より強気にベットしてよい手札ということになるだろう。もちろん、勝敗の決定は対戦相手が持っている手札との相対関係で決まるものであるから、2番目に強い手札を持っていても、対戦相手が1番強い手札を持っていれば負けることになる。対戦対手が持っている手札が不確定である以上、最後はギャンブルだと思って賭けるしかないということだろう。

 実際に、2枚の手札と5枚の共通カードが与えられた場合における手札の強さの順位を計算するプログラムを作ってみたので、興味があれば試してみるとよいだろう。

ポストフロップにおけるブラフ

 ターン、リバーでバリューベットを打つ場合は素直に手札の強さを評価すれば良いということになるだろうが、フロップでブラフベットを打っている場合にターン、リバーでブラフを継続するかということが問題になるだろう。これもパターン分けすると次のようになる。

役なし役あり
ベットブラフ継続バリューへ変更
チェック撤退フェイク

フロップでブラフだったものが、ターンやリバーで役が成立することでバリューベットに変更できるケースがあるだろう。反対にバリューがあったものが、ターンで失われた(典型的にはトップペアがトップでなくなるなど)結果としてブラフとしてベットを継続するか、撤退するかという判断が必要になる場合もあるかもしれない。

 リバーまでベットを打つ場合における教科書的な推移を表にすれば

フロップターンリバー
パターン1ブラフブラフブラフ
パターン2ブラフブラフバリュー
パターン3ブラフバリューバリュー
パターン4バリューバリューバリュー

と表すことができる。問題はそれぞれのパターンについてバリューとブラフをどの程度の比率にすべきかだろう。ブラフを多くしすぎると突っ込まれた際に大きな損失を負うことになるため、バランスをとるのが非常に難しく感じる。本のお薦めによれば、パターン1:パターン2+3:パターン4を1:1:1ぐらいにするとバランスが良いということである。ブラフのうち半分ぐらいはバリューに転換するぐらいが程よい比率であり、それに合うようにブラフで対戦相手を降ろすことが難しいと感じる場合は適度にフォールドを選択すればよいということになるだろう。

 最後に、プレイしていてしばしば見かけるのが、アグレッサーでフロップ、ターンとそれほど大きくないCBを打っていたにもかかわらず、リバーにおいて突然特大ベットやオールインをしてくるプレイヤーである。これはおそらく以下の二パターンがある。

  1. 最初から強い役が完成してたが、他のプレイヤーにわからないように通常通りCBを打っていた。もしくは、リバーのカードで強い役が完成した。
  2. プリフロップにおける手札は強いものであったが、フロップからリバーまでのカードで何の役もできなかったため、他のプレイヤーを降ろすためにブラフの目的で特大ベットをした。

要するに、こういう行動してくるプレイヤーは強い役を持っているか、反対に何の役もできていないゴミ手札を持っているかのいずれかであるということになる。このように二極化した手札について同じ行動をとることをポラライズ(Polarize)というらしい。他のプレイヤーがどちらなのか判断を難しくする行動であり、リバーで特大ベットが来た場合に、中途半端な手札ではコールするかフォールドするか判断を迷わせる行動である。

 こういったプレイの良いところは、対戦相手がブラフを疑ってそれほど強くない手札しか持っていない場合でも特大ベットにコールしてくれるケース(リバーにおける特大ベットに対してコールすることをヒーローコールというらしい。ブラフに挑戦するヒーローということだろうか?)が増えるということである。言い換えれば、どれほど強い役を完成させてもベットが小さいうちに対戦相手がフォールドしてしまえば、大した量のチップを奪うことができないことになってしまう。バリューベットしか打たないプレイヤーであれば、特大ベットが出てきた時点でフォールドしてしまえば損失は小さくて済むということになってしまうだろう。こういったブラフベットを混ぜ込むことでバリューベットにもコールしてもらえるようにする、というのがこのブラフの目的ということになるだろう。この比率はパターン2+3+4:パターン1であるからバリュー:ブラフで2:1ぐらいになるように仕掛ければよいのかもしれない。

ルースアグレッシブなプレイヤーとの戦い方

 前回の投稿ではルースパッシブなプレイヤーの特徴を紹介したが、今回はルースアグレッシブなプレイヤーの特徴を示そう。ルースパッシブなプレイヤーがブラフを無効化するような戦略を採用していると推測したが、ルースアグレッシブなプレイヤーはこれとは対極的にブラフを非常に好んで使うプレイヤーとして特徴づけることができる。具体的な特徴を書くと以下のようなプレイスタイルである。

  1. プリフロップではどの手札でFoldしているかわからないぐらい幅広い手札で参戦してくる。すべての手札で参戦しているか、中途半端な強さの手札だけFoldしているかのいずれかだろう。72oなどの弱い手札はブラフに用いるため、強いか弱いかで二極化した(ポラライズした)レンジの手札を持っていることが多いのかもしれない。ベット額も大きく、(弱い手札であっても)3-betレンジであることが少なくないし、複数ルースアグレッシブがいる場合はレイズ合戦になってプリフロップでオールインになることも少なくない。
  2. プリフロップでアグレッサー(最後にレイズしたプレイヤー)になりたがる傾向が非常に強い。フロップ以降は手札の強さにかかわらず大きめのCBを継続して打ってくる傾向がある。最終的にショーダウンでできる役よりベットの強さで他のプレイヤーをFoldさせることで勝利することが多いように見える。
  3. 勝つか負けるか微妙な手札のプレイにはあまり興味がなく、比較的容易にフォールドするし、ベット額が目に見えて小さくなる傾向がある。
  4. 弱い手札でもアグレッシブにベットしてくるため、必然的にブラフになっている比率が高い。ブラフをキャッチされると弱腰になる傾向があり、手札の中にブラフが多いことが他のプレイヤーにばれるとテーブルを離れる傾向がある。
  5. 前節で説明したリバーにおけるポラライズした特大ベットを相当の頻度で使ってくる。

これに対する教科書的な対抗策は次のようなものであるかもしれない。

  1. プリフロップで参入する手札を強いものに絞るようにする。ルースアグレッシブなプレイヤーは弱い手札で参戦していることも多いため、勝率を上げることができる。レイズ合戦はオールインになってもよい場合のみ参加すること。
  2. 自分でベットしなくてもルースアグレッシブなプレイヤーは勝手にベットを打ってくるのでコールでついていくのが基本となる。ただし、強い手札が既に完成している場合はベットに対してレイズで返すと、ブラフであってもリレイズしたりオールインしてくれたりするので活用してもよいだろう。
  3. 勝つか負けるか微妙な手札のゲームでは、ルースアグレッシブなプレイヤーは存在感がないので、こういったゲームが得意であればそれを利用する。
  4. バリューを持っている場合とブラフの場合の頻度をなるべく観察するようにする。ブラフが多いプレイヤーであれば、ブラフの頻度に合わせて積極的にコール、レイズをしていくことで大きくチップを奪うことができる。
  5. バリューベットとブラフベットで癖がないかを観察するようにする。同じように打っているように見えても、ブラフの場合だけベット額が大きめなど一定の傾向を見いだせればバリューとブラフをある程度区別できるかもしれない。

総じていえばタイトパッシブなプレイスタイルをうまく運用すれば(強気に出るところは強気に出る必要があるけど)攻略しやすいプレイヤーというイメージだろうか。多くのプレイヤーがCBや大きいベットに対してフォールドする確率が高い方に偏っているという性質を利用してくるプレイスタイルと言えるかもしれない。CBや大きいベットに躊躇せずコールやレイズしろという話なのかもしれないが、なかなかに難しく感じるのである。 

 逆説的であるかもしれないが、このプレイヤーを相手にする場合はフロップで勝つことに自信が持てる場合以外はフォールドしてしまってもよいかもしれない。プリフロップのベットが無駄になると思うかもしれないが、これらのプレイヤーはフロップ以降のベット額が大きすぎるため、相対的にプリフロップのベットが小さく見える(ルースであるためにエントリーのコストを下げたがるプレイヤーもいるように見える)のである。

 反対に、フロップで勝つ確率が高いと判断した場合は対戦相手の強気ベットに対してオールインしてしまってよいと思う(ポストフロップ以降の戦略を無効化してしまうことができる)。バリューであっても勝負は5分5分だろうし、ブラフであれば強気のCB分のチップを回収できるか、高い確率で勝利することができる。ルースアグレッシブなプレイヤーはフロップ以降強気でベットしていく気満々であるから、オールインにのってくる可能性も高いように思う。うまく手札を絞っていればこちらが勝つ確率が高くなって、総じてチップを奪えることが多くなると考えられる。強気のCBをエクスプロイトする操作であるため、フロップ以降の強気のCBで稼ぐスタイルのプレイヤーは、このアプローチをすると相当嫌がるように見える。

 最後に、慣れないプレイヤーはこのスタイルのプレイヤーを相手にすると圧倒されてしまうかもしれない。筆者自身もこのタイプは正直苦手である(勝ちやすいとは書いたけど、フロップからオールインとかやりたくない)。もし苦手だと思うのならば、テーブルを離れてしまうというのも攻略法の一つということは指摘しておいてもよいだろう。