相対性理論における運動と保存量

物理学

概要

 筆者は過去に書いた著作の中で相対性理論が想定している時空が円錐座標系

\[ \small x^2+y^2+z^2+c^2T^2 = c^2t^2 \]

であること、時間を取り除いた時空、すなわち、空間が3次元球面

\[ \small \hat{x}^2+\hat{y}^2+\hat{z}^2+\hat{s}^2 = 1 \]

であるという推測を繰り返し述べてきた。ただ、この時空における運動方程式や保存量がどのようなものになるかについていくつか推測を記述したものの、どこか歯切れの悪い議論に終始しているような気がしている。そのため、もう一度ここで議論を整理して問題点を示しておこうと思う。

相対性理論における速度と運動量

 議論の簡略化のため、ポテンシャル(加速度)がない運動を考える。筆者の主張は、相対性理論では時間が2次元であり、各座標で異なる時間\(\small T_{xyzt}\)が存在しており、古典力学では共通の時間\(\small t\)ではなくこの座標ごとに定義された局所時間\(\small T_{xyzt}\)を時間として認識しているということであった。そのため、相対性理論における運動を扱うためには\(\small T_{xyzt}\)の関数であった運動方程式を\(\small t\)の関数として定義し直す必要がある。

 これを行うため、円錐座標系で運動する質点(粒子)を考える。この質点は古典力学と異なり、どのような運動をしても円錐座標系上にとどまらなければならないという制約を受ける。運動方程式を特定するため、円錐座標系の座標を\(\small t\)で微分すると

\[ \small x\frac{dx}{dt}+y\frac{dy}{dt}+z\frac{dz}{dt}+c^2T\frac{dT}{dt} = c^2t \]

を得る。もう一回微分すると

\[ \small \left(\frac{dx}{dt}\right)^2+\left(\frac{dy}{dt}\right)^2+\left(\frac{dz}{dt}\right)^2+c^2\left(\frac{dT}{dt}\right)^2\qquad\qquad \\ \small \qquad\qquad+x\frac{d^2x}{dt^2}+y\frac{d^2y}{dt^2}+z\frac{d^2z}{dt^2}+c^2T\frac{d^2T}{dt^2} = c^2 \]

を得る。仮定から、二次微分はすべて0であったから

\[ \small \left(\frac{dx}{dt}\right)^2+\left(\frac{dy}{dt}\right)^2+\left(\frac{dz}{dt}\right)^2+c^2\left(\frac{dT}{dt}\right)^2 = c^2 \]

となる。この二つの式が円錐座標系上を運動する質点が満たさなければならない方程式である。

 右辺は定数であるから、こういった運動に保存量\(\small E\)が存在するならば、両辺に掛けても等式は成り立つことになる。この際、以下のルールで記号を置き換えることにする。

\[ \small p_\mu = \frac{E}{c^2}\frac{dq_\mu}{dt}, \quad \mu = x,y,z,T \]

ここで、\(\small q_\mu\)は座標であり\(\small (q_x,q_y,q_z,q_T) = (x,y,z,T)\)である。両辺に\(\small E^2/c^2\)を掛けて式を置き換えると

\[ \small E^2 = (p_x^2+p_y^2+p_z^2+p_T^2c^2)c^2 \]

を得る。特殊相対性理論におけるエネルギーの公式から類推すれば、\(\small p_T=m\)であり、質量といわれている物理量は円錐座標系における\(\small T\)軸方向の運動量であることが分かる。また、時間の概念を2次元にしているために、質量にも二つの概念を定義することができて、局所時間\(\small T\)の運動量が\(\small p_T\)であったのであるから、共通の時間\(\small t\)に関する運動量\(\small p_t=M\)というものも考えることができるだろう。これらの記号で上記の式を置き換えると

\[ \small E^2 = M^2c^4 = m^2c^4+\left(p_x^2+p_y^2+p_z^2 \right)c^2 \]

と表すことができる。\(\small p_t=M\)は不変質量(相対論的質量)と言われる物理量に対応する。

 重力など質量に関連する現象を扱う場合は\(\small m\)と\(\small M\)の区別を厳格に扱う必要があると考える。本によって、速度(運動量)の大きさによって重力から受ける影響が大きくなるのか、影響を受けないのか記述が分かれるのだけど・・・運動量の時間変化(近似的には加速度)が自身の質量の大きさに関係がないという仮定(等価原理)が正しいとすると重力質量は\(\small M\)であり、重力による運動自体は速度(運動量)の大きさの影響を受けないが、エネルギーの大きさは速度(運動量)の大きさによって変化するということになる。ただ、この考え方でいくと、光のように質量\(\small m\)を持たない物理的対象も重力を持つことになる(教科書的な一般相対性理論はこの立場のように見える)。これが現実の観測と合わないと考えるならば重力質量は\(\small m\)でなければならないが、この場合重力から受ける運動量の時間変化が自身の質量の大きさに関係がないという主張(等価原理)が間違いになってしまう。もう一つの仮説を挙げれば、他の物質に影響を及ぼす重力の発生源の質量は\(\small m\)であるが、他の物質の重力から影響を受ける側の質量は\(\small M\)であるということになるかもしれない。これだと等価原理は正しい、光は重力を持たない、光は重力によって曲げられるという3点セットをすべて正当化できることになる。時間が2次元であると考えるならば、一般相対性理論においては質量も2次元であり、二つの質量を使い分ける必要があるということなのかもしれない。まあ、現時点の筆者にはどれが正解と判断できるだけの知識も信念もないというのが正直なところである。

 運動量の定義式から、速度と運動量の関係を求めると

\[ \small E = Mc^2 = \sqrt{m^2c^4+p^2c^2}, \quad p^2 = p_x^2+p_y^2+p_z^2 \]

であったから、

\[ \small \begin{align*} &\frac{dx}{dt} = \frac{p_x}{M} = \frac{p_xc^2}{\sqrt{m^2c^4+p^2c^2}} \\ &\frac{dy}{dt} = \frac{p_y}{M} = \frac{p_yc^2}{\sqrt{m^2c^4+p^2c^2}} \\ &\frac{dz}{dt} = \frac{p_z}{M} = \frac{p_zc^2}{\sqrt{m^2c^4+p^2c^2}} \\ &\frac{dT}{dt} = \frac{m}{M} = \frac{mc^2}{\sqrt{m^2c^4+p^2c^2}} \end{align*} \]

を得ることができる。この式は相対性理論における自由落下の計算で用いたが、このように導出されたものである。古典力学における速度が

\[ \small \frac{dx}{dT} = \frac{dx}{dt} \left(\frac{dT}{dt} \right)^{-1} = \frac{p_x}{m} \]

のように計算できることは容易に理解できるだろう。

 最後に、保存量\(\small E\)の性質について、古典力学とは異なるものであることに注意する。\(\small n\)個の質点の運動量とエネルギーが

\[ \small E_i^2 = M_i^2c^4 = m_i^2c^4+\left(p_{x_i}^2+p_{y_i}^2+p_{z_i}^2 \right)c^2, \quad i=1,\cdots,n \]

で与えられており、相互作用がないものと仮定する。このとき、この物理系の保存量(エネルギー)はどのように集計すればよいだろうか?古典力学では

\[ \small E = \sum_{i=1}^n E_i = \sum_{i=1}^n\sqrt{m_i^2c^4+p_i^2c^2}-m_ic^2 \approx \sum_{i=1}^n\frac{p_i^2}{2m_i} \]

であったが、相対性理論では

\[ \small E^2 = \sum_{i=1}^n E_i^2 = \sum_{i=1}^n m_i^2c^4+p_i^2c^2 \]

でなければならないだろう。もし、\(\small E^2\)の平方根を保存量と考えるのであれば

\[ \small E = \sqrt{\sum_{i=1}^nm_i^2c^4+p_i^2c^2} \]

であると考えなければならない。これは古典力学のエネルギーでは全く近似できない値である。こういった計算は相対性理論では相対論的質量における質量欠損という形で質量をそのまま加算する方法で集計できないものとして扱われることで表現される。例えば、\(\small M_1,M_2\)の相対論的質量を持つ2つの質点を合わせた系を扱う場合\(\small M = M_1+M_2\)と表すことができなくて

\[ \small M = \sqrt{M_1^2+M_2^2}\leq M_1+M_2 \]

という形で質量が減ることになる。

 量子力学ではディラック行列といわれる二乗すると1になるが、異なる添え字の掛け算が0になる4次元の行列

\[ \small \gamma_{i,j}^2 = 1, \quad \gamma_{i,j}\gamma_{i,k} = 0,,\quad \gamma_{i,j}\gamma_{h,k} = 0, \quad i,h=1, \cdots,n,\;j,k=0,1,2,3 \]

を用いて、

\[ \small \frac{E}{c} = \sum_{i=1}^n \gamma_{i,0}m_ic+\gamma_{i,1}p_{x_i}+\gamma_{i,2}p_{y_i}+\gamma_{i,3}p_{z_i} \]

のように表現される。両辺を二乗すれば

\[ \small E^2 = \sum_{i=1}^n m_i^2c^4+p_i^2c^2 \]

となるということを定式化したものであると理解できるだろう。一般に知られる知識では、古典力学的なエネルギーと相対論的なエネルギーは近似的に一致するものであるかのような解説がなされるが、実際には全くの別物であると考えなければならないということである。

相対性理論における加速度と運動量の時間微分

 前節の議論から、相対性理論における速度と運動量の関係は

\[ \small \frac{dq_\mu}{dt} = \frac{p_\mu}{M} = \frac{p_\mu c^2}{\sqrt{m^2c^4+p^2c^2}} \]

で与えられるのであった。このように速度を定めると運動量の大きさにかからわず、質点の速度は光速を超えることができないことになる。同様にして、加速度と運動量の時間微分の関係を求めよう。これは上記の式を時間について再度微分することで計算できる。実際に計算すると

\[ \small \begin{align*} \frac{d^2q_\mu}{dt^2} &=\frac{c^2}{\sqrt{m^2c^4+p^2c^2}}\frac{dp_\mu}{dt} \\ & -\frac{p_\mu c^2}{(m^2c^4+p^2c^2)^{3/2}}\left[p_x\frac{dp_x}{dt}+p_y\frac{dp_y}{dt}+p_z\frac{dp_z}{dt}+mc^2\frac{dm}{dt} \right] \end{align*} \]

が成り立つ。この式が相対性理論における加速度と運動量の時間微分の関係式である。

 この関係式の面白い例は、電磁気学におけるクーロンポテンシャルであり、ポテンシャル関数が

\[ \small V = -\frac{e^2}{r}, \quad r = \sqrt{x^2+y^2+z^2} \]

で与えられる。質量が不変であるものと仮定して、運動量の時間微分を

\[ \small \frac{dp_\mu}{dt} = -\frac{\partial V}{\partial q_\mu} = -\frac{e^2}{r^3}q_\mu, \quad \frac{dm}{dt} = 0 \]

とおいて、この式を上記の式に代入すると

\[ \small M\frac{d^2q_\mu}{dt^2}=-\frac{e^2}{r^3}q_\mu+\frac{p_\mu c^2}{m^2c^4+p^2c^2}\frac{e^2}{r^3}\left[p_xq_x+p_yq_y+p_zq_z \right] \]

を得る。式を整理すると

\[ \small \begin{align*} M\frac{d^2q_\mu}{dt^2}=&-\frac{e^2}{r^3}\frac{c^2}{m^2c^4+p^2c^2}\\ & \times \left[q_\mu m^2c^2+q_\mu (p_x^2+p_y^2+p_z^2)-p_\mu(p_xq_x+p_yq_y+p_zq_z) \right] \end{align*} \]

速度と運動量の関係式を使って、運動量を速度に変換すると

\[ \small \begin{align*} M\frac{d^2q_\mu}{dt^2}=&-\frac{e^2}{r^3}\frac{q_\mu m^2c^4}{m^2c^4+p^2c^2} \\ &+\frac{e^2}{r^3c^2}\Biggl[q_\mu \left(\left(\frac{dx}{dt}\right)^2+\left(\frac{dy}{dt}\right)^2+\left(\frac{dz}{dt}\right)^2\right) \\ &\qquad\quad-\frac{dq_\mu}{dt}\left(q_x\frac{dq_x}{dt}+q_y\frac{dq_y}{dt}+q_z\frac{dq_z}{dt}\right) \Biggr] \end{align*} \]

を得る。\(\small M\approx m\)、及び、

\[ \small \frac{m^2c^4}{m^2c^4+p^2c^2} \approx 1 \]

と近似すれば

\[ \small \begin{align*} m\frac{d^2q_\mu}{dt^2}=&-\frac{e^2}{r^3}q_\mu \\ &+\frac{e^2}{r^3c^2}\Biggl[q_\mu \left(\left(\frac{dx}{dt}\right)^2+\left(\frac{dy}{dt}\right)^2+\left(\frac{dz}{dt}\right)^2\right) \\ &\qquad \quad-\frac{dq_\mu}{dt}\left(q_x\frac{dq_x}{dt}+q_y\frac{dq_y}{dt}+q_z\frac{dq_z}{dt}\right) \Biggr] \end{align*} \]

が得られる。この式はローレンツ力の式に対応しており

\[ \small \begin{align*} &m\frac{d^2q_\mu}{dt^2} = q(\mathcal{E}+v\times \mathcal{B}) \\ &\mathcal{E} = -\frac{e^2}{r^3} \\ &\mathcal{B} = \frac{1}{c^2} (v\times q\mathcal{E}) \end{align*} \]

と表すことができる。それぞれの項\(\small \mathcal{E},\mathcal{B}\)は電磁気学における電場、磁場に対応する。このことから導かれる結論は電場と磁場は元をたどればどちらもクーロンポテンシャルであり、その直接的な効果を電場、相対論的な効果を磁場と認識しているということになる。これはアインシュタインが特殊相対性理論から導きだした電磁場の考え方であった。上記で導出した式はこのような計算に対応していると考えられる。

 次に、円錐座標系において運動方程式が満たさなければならない制約条件

\[ \small \left(\frac{dx}{dt}\right)^2+\left(\frac{dy}{dt}\right)^2+\left(\frac{dz}{dt}\right)^2+c^2\left(\frac{dT}{dt}\right)^2\qquad\qquad \\ \small \qquad\qquad+x\frac{d^2x}{dt^2}+y\frac{d^2y}{dt^2}+z\frac{d^2z}{dt^2}+c^2T\frac{d^2T}{dt^2} = c^2 \]

の両辺に\(\small E^2/c^2\)を掛けた式を求めよう。速度の二乗部分は前節のとおりであったから、

\[ \small EV = \frac{E^2}{c^2}\left(x\frac{d^2x}{dt^2}+y\frac{d^2y}{dt^2}+z\frac{d^2z}{dt^2}+c^2T\frac{d^2T}{dt^2}\right) \]

の値を求めよう。この場合、\(\small E^2=M^2c^4 \neq m^2c^4+p^2c^2\)なので、運動量はあくまで速度に\(\small E\)を掛けているものとして表すと

\[ \small \begin{align*} &\frac{dq_\mu}{dt} = p_\mu\frac{ c^2}{E} \\ &\frac{d^2q_\mu}{dt^2}=\frac{c^2}{E}\frac{dp_\mu}{dt}-\frac{p_\mu c^2}{E^2}\frac{dE}{dt} \end{align*} \]

となる。\(\small V\)を計算すると

\[ \small \begin{align*} V &= \frac{E}{c^2}\left(x\frac{d^2x}{dt^2}+y\frac{d^2y}{dt^2}+z\frac{d^2z}{dt^2}+c^2T\frac{d^2T}{dt^2}\right) \\ &= x\frac{dp_x}{dt}+y\frac{dp_y}{dt}+z\frac{dp_z}{dt}+c^2T\frac{dm}{dt}-\frac{xp_x+yp_y+zp_z+c^2Tm}{E}\frac{dE}{dt} \\ &= x\frac{dp_x}{dt}+y\frac{dp_y}{dt}+z\frac{dp_z}{dt}+c^2T\frac{dm}{dt}-\frac{x\frac{dx}{dt}+y\frac{dy}{dt}+z\frac{dz}{dt}+c^2T\frac{dT}{dt}}{c^2}\frac{dE}{dt} \end{align*} \]

を得る。最後の項の分子は

\[ \small x\frac{dx}{dt}+y\frac{dy}{dt}+z\frac{dz}{dt}+c^2T\frac{dT}{dt} = c^2t \]

であったから、

\[ \small V = x\frac{dp_x}{dt}+y\frac{dp_y}{dt}+z\frac{dp_z}{dt}+c^2T\frac{dm}{dt}-t\frac{dE}{dt} \]

となる。\(\small E=Mc^2\)とすると

\[ \small V =\left(x\frac{dp_x}{dt}+y\frac{dp_y}{dt}+z\frac{dp_z}{dt}+c^2T\frac{dm}{dt}-c^2t\frac{dM}{dt} \right) \]

と表すこともできるだろう。もちろん、\(\small E\)が時間の経過で変化しないと仮定するならば、最後の項は0となる。

 このポテンシャル関数\(\small V\)が外生的に与えられていると考えるならば、相対性理論におけるエネルギーは

\[ \small E^2 = m^2c^4+p^2c^2+EV=K^2+EV \]

を満たさなければならないということになる。この二次方程式の解は

\[ \small E = \sqrt{K^2+\frac{1}{4}V^2}+\frac{1}{2}V \]

となる。相対論的質量も運動量のみで表すことができず

\[ \small M = \frac{E}{c^2} \]

であるから、速度も厳密には

\[ \small \frac{dq_\mu}{dt} = \frac{ p_\mu}{M} \]

でポテンシャル関数の影響を受けることになる。こういった影響は電磁気学や量子力学ではベクトルポテンシャルという形式で扱われていると推測できるだろう。

 最後に、前節同様に\(\small n\)個の質点の運動量とエネルギーが

\[ \small E_i^2 = M_i^2c^4 = m_i^2c^4+\left(p_{x_i}^2+p_{y_i}^2+p_{z_i}^2 \right)c^2+E_iV_i, \quad i=1,\cdots,n \]

である場合の集計値を考えよう。そのまま足せば

\[ \small E^2 = \sum_{i=1}^n E_i^2 = \sum_{i=1}^n m_i^2c^4+p_i^2c^2+\sum_{i=1}^n E_iV_i \]

となる。このような式になると、個々の質点のエネルギーを分離して考えることが難しい。左辺が\(\small E_i^2\)の多項式であるのに対して、右辺は\(\small E_i\)の多項式であるから、この式を\(\small E=\sum E_i\)、\(\small V = \sum V_i\)のような集計値の式として表現することは困難であるように見える。言い換えれば、相対性理論ではポテンシャル関数をすべての物理的な対象で共有する\(\small V\)のような関数で表現することがそもそも不可能であるかもしれないということになる。何らかの方法(仮定)を用いて

\[ \small E^2 \approx \left(\sum_{i=1}^n \sqrt{m_i^2c^4+p_i^2c^2}+V_i\right)^2 \]

と近似しているというのが古典力学に相当するということになる。

まとめと問題点

 ここまで見てきたように、一般に知られる知識と異なり、古典力学と相対性理論ではエネルギーもポテンシャルも全く異なる性質を持つ物理量であると推測できる。そのため、重力のような現象を相対性理論で扱いたいという場合、ハミルトニアン

\[ \small H = \sum_{i=1}^n\frac{p_i^2}{2m_i}-\frac{1}{2}\sum_{i=1}^n\sum_{j=1,i\neq j}^n\frac{Gm_im_j}{r_{ij}} \]

に相対論的な調整項を加えることで表現するということは適切なアプローチではないように思われる。古典力学は根本的に重力という物理現象を誤って理解しており、これとは全く異なる定式化が必要となる。もちろん、それは一般相対性理論であるということになるが、一般相対性理論は直感的な理解が難しいうえに、解析解を求められることも少ないため計算も容易でないことが多い。また、質量や重力というもの本質が何であるかということもよくわからないものになっているような印象も受ける(筆者が理解できていないだけかもしれないけど)。物理学において、いまだに質量の起源や重力の発生メカニズムが明らかにされていないことはよく知られていることだろう。

 おそらく、重力や質量がどのようなものであるかというものの真相は以下の2つのいずれかであろう。

  1. 物質に質量をもたらしている素粒子が存在し、その素粒子が重力を生み出している。電磁場(光子)のように重力を伝達する素粒子(重力子)を媒介して重力が発生している。
  2. 時間や空間というものが我々が認識しているものと異なっており、それをユークリッド空間上の現象として理解しているために、質量や重力というものが存在すると錯覚している。言い換えれば、そもそも重力という力は存在しておらず、曲がっている時空における現象を直交座標系の現象として扱っていることに原因がある。

これらの仮説には明確に差異があり、1.が正しいのであれば重力は光速以上の速度では伝わらないということになる。加えて、もし重力を伝達する素粒子を制御できるのであれば、重力を伝達しないように遮ることができる可能性があるということになる。一方で、2.の場合は重力は伝達に一切時間がかからず、すべての空間上の物質に一律に作用するかのように扱われるということになるだろう。この場合、いかなる手段を用いても重力の伝達を妨げることは不可能であるということになる。おそらく、現時点では実験でこれらを確定できる絶対的な証拠というものは発見されていないのだろう。一応、筆者が支持している仮説は2.の方であり、しかも具体的に円錐座標系(空間でいえば3次元球面)をユークリッド空間に変換して理解していることに原因があるというものである。ただ、現在の筆者にはこれを確証がある形で理論化できていないというのが正直なところである。

参考文献

[1] 平野要 (2022), 多時間理論による量子力学ー二重スリット実験に関する一考察ー, Amazon Kindle Store(英語訳:Hirano, Kaname (2022), Quantum Mechanics with Multi-Time Theory, Amazon Kindle Store.)

[2] 平野要 (2024), 複素関数とシュレディンガー方程式, Amazon Kindle Store(英語訳:Hirano, Kaname (2024), Complex Functions and Schrödinger Equation, Amazon Kindle Store.)

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